(※写真はイメージです/PIXTA)

自分はビジネスで成功して大きな財を成したものの、その子どもが自立に失敗するというケースは少なくありません。自立に失敗してしまう原因は一体どこにあるのでしょうか。また、自立に失敗した子どもは、その後どのような人生を歩むことになるのでしょうか。本記事ではAさんの事例とともに、親子のマネーリテラシーの重要性について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。

次々と問題を起こす次男を突き放せないワケ

こうして父親Aさんの預貯金からさらに700万円が消えることに。

 

そして反省もなく、またクレジットカードを使いまくっているようです。

 

長年頼っている税理士に雑談としてそんな事情を話したところ、「早く老人ホームに入居し、次男はひとりで生活させたほうがいい」と言われてしまいました。

 

正論でしかありません。しかし父親Aさんとしては、生活力がない次男を無理に突き放すと、どうなるかわからないと心配しています。そして、長男がいまも行方不明で音信不通であることも、父親Aさんの引け目として心に残ったままなのです。

 

移住して起業した50年前、思春期真っ只中の子供2人への配慮が足りないまま、無理に引っ越しをさせ結果的に人生を壊してしまったのではないか。自分のビジネスは成功したが、家庭生活は大失敗してしまった。そんな思いに囚われてしまいます。

 

現在、次男の老齢年金は月6万円程度。自宅があるので住む場所には困らないものの、それも一生安泰ではありません。築40年を過ぎて修繕費用がかさんでいます。自分が亡きあとは修繕費用も固定資産税も火災保険も次男が負担しなければなりません。

 

また、郊外の土地なので売ろうにも建物の解体費を差し引いたら0円に等しくなります。次男が自立しているのであれば、0円だとしても売却する局面ですが、それも不可能です。

 

この先、十数年が過ぎて、次男自身が介護状態となったら、その費用はどうなるのでしょうか。年金が少ないことから公的な介護施設を選択するしかありませんが、自分自身でその手続きができるとは思えません。

 

また相続分割の問題で、行方不明の長男の居場所を探しておかなければ、さらに手続きが複雑化します。不在者財産管理人の選出や失踪宣告の申し立てなど、難しい作業を次男はきっとできないでしょう。

 

父親Aさんはそう考えていくと、自分の老人ホームはなるべく安価な施設を選び、少しでも次男に預貯金を残さなければならないという思いでいっぱいです。

 

自分がまだ体が動くうちに、長男を探し出すこと、必要であれば失踪宣告を申し立てておくこと、相続の手続きを細かく紙に書いて残すこと、そして、もう生活の面倒を見ることはできないと次男に伝えなければなりません。

 

しかし、「僕ら兄弟の人生をこうしたのはお父さんじゃないか」と言われてしまうのではと、恐怖を感じてしまいます。

 

50年前に夢を見て起業や移住を考えず、あのまま東京でパン職人をしていたほうが、家族にとってはよかったのではないかと、毎日思い悩んでいます。

 

 

長岡 理知

長岡FP事務所

代表FP

 

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