母親が要介護状態に…ひとり息子が感じた「限界」
現在51歳のAさんは、小学生のころに父親を病気で亡くしてから、母ひとり子ひとりで暮らしてきました。
母親が子育てをしながら休みなく働いてくれたおかげで、Aさんは無事地元の工業高校を卒業。その後、実家から通える距離にある工場に就職し、現在も同じ職場で働いています。年収は490万円ほどです。
Aさんを支えてくれていた母親は、現在84歳。正社員ではなくパートをかけもちしていたことから、年金は月額約7万円の国民年金のみです。もっとも、「母には楽をしてもらいたいから」と、生活費はすべてAさんが支払っています。
父が亡くなった際、団体信用生命保険で住宅ローンは完済したため家賃はかかっておらず、日々の生活に問題はありません。
そんなある日のこと。母親が自宅で転倒してしまい、足を骨折して要介護状態になってしまいました。
当初、Aさんは有給を使いながら自宅で母親を看病していましたが、心身ともに負担がかかり、しだいに限界を感じるようになりました。また母親も、「なるべく息子に迷惑をかけまい」と無理をしてしまい調子を崩すという悪循環です。
「もう、大丈夫だよ。なんとかするから。自分の好きなことをやっておくれ。いままでありがとう」
そう言って力なく笑う母親を見て、「このままじゃまずい」と感じたAさん。介護施設についてネットで調べてみました。しかし、どの施設もまとまった入居費用や毎月の利用料が必要なようです。
「ひとりで介護するのは限界だ……でも、まとまったお金もないし」困り果てたAさんでしたが、介護職の経験もある筆者のホームページを見つけ、相談に訪れました。
国の制度を活用した「無理のない介護」
Aさんはこれまで、介護に際して公的なサービスをほとんど利用したことがありません。自分だけで介護を完結させるのが「親孝行」だと信じて、必死に介護していたそうです。
しかし、仕事が忙しいことに加え、不慣れな家事や介護で心身ともに負担となっており、このままでは健康を害してしまいます。
Aさんが倒れてしまうと親子共倒れになってしまいますから、Aさんから一連の話を聞いた筆者はまず「訪問介護」と「通所介護」、「宅食サービス」などの利用をおすすめしました。
訪問介護では、母親が家にいるときの見守りに加え、トイレ介助や食事の準備などをしてもらうことができます。また、通所介護ではデイサービスを利用し、健康状態の確認や自宅では大変な入浴介助、レクリエーションなどのサービスを受けられます。
さらに、公的な制度でAさんご自身が利用できるものとして「介護休業制度」があります。
介護休業制度には「介護休業」「介護休暇」「介護時短」「時間外労働の制限」などがあり、このうち「介護休業」は合計3回まで、通算93日の休みを取得することができます。また、「介護休暇」は年5日まで取得可能です。これらの制度も状況に応じて利用するよう助言しました。
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