(※写真はイメージです/PIXTA)

自分はビジネスで成功して大きな財を成したものの、その子どもが自立に失敗するというケースは少なくありません。自立に失敗してしまう原因は一体どこにあるのでしょうか。また、自立に失敗した子どもは、その後どのような人生を歩むことになるのでしょうか。本記事ではAさんの事例とともに、親子のマネーリテラシーの重要性について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。

働かなくなり「子供部屋おじさん」と化した次男

ところが1990年代に入り30代になった次男Bさんは、働くことを辞めてしまいました。フリーターという言葉が流行り始めた時期でしたが、アルバイトの同僚である大学生たちからは「無職のジジイ」などとおちょくられることが増えたのです。

 

それから65歳となる30年以上、次男は一切働くことがありませんでした。事業が成長し続けていく有能な父親とは裏腹に、次男は最近の言葉でいうところの「子供部屋おじさん」と化していきます。

 

年を取るごとに性格は卑屈になっていき、感情を爆発させ家のなかで暴れ、物を壊すことも増えました。

 

不憫に思った父親は次男Bさんに毎月お小遣いとして20万円を渡し、国民年金保険料や国民健康保険料も代わりに支払っていました。自動車も新車を買い与えていたほどです。

 

しかし次男Bさんに友達はひとりもいなく、当然ながら、女性と交際したこともありません。社会経験が30歳で止まっていて、同世代の人たちとはもう話が合わなくなったのです。

 

そうして60歳を迎えた5年前、子供たちを心配しつづけた母親は85歳でガンで亡くなってしまいました。「次男の老後のために」と思って加入していた生命保険から、死亡保険金として500万円が次男Bさんに支払われました。

 

しかしそのお金は、次男Bさんが最近執心している地下アイドルなどの推し活にあっという間に消えてしまいました。夜な夜なネットを巡回し、推しのアイドル絡みでSNSが炎上すると、それに加担して弁護士から開示請求を受け、賠償請求をされたことも。慰謝料50万円は父親Aが支払う有様でした。

 

それでも反省することはなく、居場所はネットの世界だけという状態です。

 

「65歳でその思考は幼稚」「老害オタク」とSNSでも馬鹿にされることが多いのですが、もはや惨めさすら感じていないようです。

親子で年金受給者に…次男が直面した過酷な現実

父親Aさんは90歳、次男Bさんが65歳となったいま、親子ともに年金受給者となっています。

 

父親のAさんは80歳のときに会社を専務に承継し、引退しました。退職金を受け取り、それまでに貯えていた預貯金を加えると、金融資産は1億円を超えていましたが、毎月の次男Bさんのお小遣いや、自動車の購入、年金や健康保険料、たびたび求められる追加のお小遣いによってどんどん資産が減少。

 

現在、4,200万円になっています。

 

頸椎ヘルニアで両腕がやや不自由になり、介護付き有料老人ホームに入居しようかと考えていますが、FPに費用を計算してもらうと、あと10年生きたとすると預貯金と年金でギリギリの状態ということがわかり断念します。

 

しかし最近、次男Bさんが700万円を貸してほしいと泣きついてきました。

 

クレジットカード数枚を使い込んでいて、返済に追われているらしいのです。銀行に行き「おまとめフリーローン」なるものを申し込もうとしたところ、窓口の銀行員から「申し訳ありませんが、お手続きはできません」と冷たく断られてしまいました。

 

無職の年金生活者ですから無理もありませんが、次男Bさんには銀行員が自分を見透かしているように見えたようです。

 

次ページ次々と問題を起こす次男を突き放せないワケ

※プライバシー保護の観点から、実際の相談者および相談内容を一部変更しています。

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