「ノー」チャレンジは、みずから課している重荷のうち避けられるのはどれか、あなたが理解するための手立てになるでしょう。これはまた、機会費用を比較考量するうえでも役立ちます。つまり、これを引き受けたら、今後何を断らなくてはならないのか、これを断ったら、今後何を引き受けることができるのか、という判断です。
際限なく寛大さを示そうとすれば、あなたはその優しさのせいで心身ともにすり減り、人を動かす力も弱まってしまいます。ノーと言うことで、きわめて重要な線引きをすることができます。
ほんとうはヘトヘトなのに、それをうわべだけの朗らかさで覆い隠し、ささいなきっかけで逆上しかねない状態でいるのはもうやめましょう。他人を喜ばせるためだけに、心のコンパスを無視してはいけないのです。
「ノー」と言うことで得られる“思わぬ利点”
ノーと言うことに抵抗を感じなくなるにつれて、ノーと言われることにも抵抗がなくなっていきます。
自分の経験に照らせば、依頼を断る理由はたいてい、誰に頼まれたかには(ほとんど)関係なく、個人的な事情にあるとわかります。ノーと言うことは、もっとも基本的な効果として、自分自身のやるべき事柄に取り組む時間をつくる役に立ちます。
しかしこれには、相手にも断ってかまわないと暗黙の許可を与えるという隠れた利点もあります。すると、誰もが成熟し、隠し立てをせず率直なコミュニケーションをとれる関係に変わっていけるのです。ある教え子はその経験をこう語っています。
「人は何かを頼むとき、相手に圧力をかけているわけではないことを学びました。ただお願いしているだけなのです。応じてもらえない可能性があることは理解していますし、それはそれでかまわないのです。以前は、頼みごとをするときには生きるか死ぬかの問題のように感じていましたが、それは大きな間違いであったと今ならわかります」
ゾーイ・チャンス
イェール大学経営大学院助教
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