勤め先の会社が、従業員の忠誠心を推し量るために仕掛けてくる「ダミースカウト」。とくに、役員候補で次期取締役の呼び声が高い人材など、会社から高いロイヤリティを求められている立場の人に対して仕掛けられるケースが多いといいます。本稿では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、現在人材業界で聞かれる「ダミースカウト」の実態について解説します。
突然、ライバル企業から「破格のオファー」が…“役員候補”の人材が警戒すべき〈ダミースカウト〉とは?【キャリアのプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

 5%程度の人が「ダミースカウト」を経験している

その証拠に、筆者らがファーストコンタクトを行い、接触に成功した事例のなかで、このダミースカウトを警戒し、確認を求めてくる人が5%程度はいます。つまり100人中5人くらいの人が、過去に「ひょっとするとダミースカウトかもしれない」と警戒するような接触を受けたことがある証といえそうです。

 

とくに役員候補になっている人物で近い将来に昇進の期待がある、もしくは経営陣が指名を考えているような場合に、ダミースカウトがうごめくことがあります。

 

該当者が仕事のできる人物であることはわかっている訳ですが、現在の勤め先に対するロイヤリティを測るために、わざとライバル会社から破格のオファーがもたらされたかのような架空の話をでっちあげて接触し、その反応を調査するという事例は、稀に耳にします。

 

また最近では、先端技術を取り扱うモノづくりの企業で産業スパイが過去に潜入したと思われる痕跡があるとか、機密情報の持ち出しが実際にあったなど、深刻な事例が企業の内部で問題になることがあります。その場合は技術系として従事している人たちに情報漏洩のリスクがないか確認するためにダミースカウトを隠れミノにした調査が行われることもあります。

 

経営陣が従業員を信頼し、双方が虚心坦懐にコミュニケーションを取れていれば、このように策士が策を講じるような必要は本来ないのでしょうが、上記は筆者らが日々の業務のなかで実際に遭遇したことのある事例です。