勤め先の会社が、従業員の忠誠心を推し量るために仕掛けてくる「ダミースカウト」。とくに、役員候補で次期取締役の呼び声が高い人材など、会社から高いロイヤリティを求められている立場の人に対して仕掛けられるケースが多いといいます。本稿では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、現在人材業界で聞かれる「ダミースカウト」の実態について解説します。
突然、ライバル企業から「破格のオファー」が…“役員候補”の人材が警戒すべき〈ダミースカウト〉とは?【キャリアのプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

最近人材業界で聞かれる「ダミースカウト」って? 

「ダミースカウト」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。最近人材業界などでよく知られるようになった言葉で、とくにヘッドハンティングの現場では広く普及してきています。実際にダミースカウトに一度でも遭遇すると、その後は誰もが疑心暗鬼にならざるを得ません。それだけ物騒で一抹の恐怖さえ感じる手法です。

 

通常、ヘッドハンティングのお誘いというのは、自宅や職場に手紙が届いたり、仕事用のメールアドレスにスカウトメールがきたり、会社貸与のスマートフォンや会社の内線に電話がかかってきたり、あるいは帰宅途中に駅を出たところで声をかけられたりといった形でファーストコンタクトが行われるのが一般的です。

 

一方、転職サイトに登録した情報を基にSNS経由でスカウトを受けるというのは本来のヘッドハンティングではありません。対象者の情報がまったく開示されていない状況でありながら詳細に調べ上げられていたり、よく知った人から声をかけられたりする、それが本当のヘッドハンティングです。

 

ダミースカウトというのも、上に紹介した接触技法と同じ手法、同じ文面、同じような内容で行われます。

 

すなわち「ダミースカウトとは何か」を単刀直入にいえば、勤め先の会社が、従業員の忠誠心を推し量るために仕掛けてくる偽のスカウトのこと。もしくはその従業員のキャリアに何らかの理由で傷をつけたい勢力が、失脚の遠因を作ろうとしているものです。

 

現職における敵や悪い意味でのライバル、それらが偽のヘッドハンティングを仕掛けてくることがあるのです。非常に物騒ですが、こうした負の要素がスカウト案件に混ざり込んでくることは珍しくないため、注意が必要です。