2023年の転職市場を振り返ると、大手からスタートアップにチャレンジする若手が昨年度から30%も増加。トップクラスの大学・大学院の新卒人材の進路も「起業」が1位を占めることが増え、大手からスタートアップへの若手人材の動きが顕著にみられるようになっています。本稿では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、ここ数十年の就職・転職の変化について詳しく解説します。
大手企業の「新卒一辺倒」は見直し必至か…近年の若手採用市場の顕著な傾向【キャリアのプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

スタートアップ・起業にチャレンジする若手人材が顕著に増加

2023年の転職市場を振り返ると多くの変化が思い浮かびますが、その1つに、大手企業からスタートアップ企業にチャレンジする若手人材の数がハッキリと統計上の数字として上昇していることが挙げられます。昨年のデータと比較でも、筆者らのコンサルティングの実績からみても、30%以上増加しているのです。

 

この数年、日本のトップクラスにある大学や大学院の新卒においても、卒業後の進路として、「起業」が1位を占めることが多くなっています。

 

ある国立大学の工学系研究室の修士の例をみてみましょう。

 

この研究室は毎年30人ほどの理系の人材を輩出しているのですが、25年から30年くらい前までは大半の学生が大手自動車メーカーに入社していました。ここでは教授の推薦というお墨付きが主流でした。

 

それが5年ほど経つと、外資系コンサルティングファームに進む学生が増えてきました。さらに10年ほどで外資系のIT企業を選ぶ学生が急激に増え始めました。この頃からは、いわゆる日系の製造業大手に進む人が大幅に減少するようになります。

 

18年頃からは、それまでの外資系コンサルティングファームやIT企業に進んでいた人よりも、産声をあげたばかりのスタートアップ企業に進む人が多くなりました。さらについ最近、23年には自ら起業する人がもっとも多くなったのです。

 

このように、過去30年間で工学系修士の進路は大きく様変わりしている訳です。これは新卒ベースの話ですが、修士の人が25歳前後だとして、そこから上の30歳前後の世代も引きずられるようにスタートアップ周辺にチャレンジをする人が急速に増えています。

 

新卒ではやはり大手を選ぶ人が多いですが、入社難易度の高い大企業を選んだとしても、入社から3年程度で1回目の転職を決断する人が顕著に増えてきていることも傾向の1つです。

 

ひと昔前は「大手企業に入ったからには定年まで勤め上げる」という意識がありましたが、それはもう完全に過去のものになっています。