地方が消滅しない“究極の理由”
コロナ禍以来、しばらく海外には出かけていなかった。先日サイパンに行ったのは本当に久々の海外旅行だった。旅行といっても、もちろん例によって「仕事がどこかに転がっていないか」を探しにいったのだけれど。
サイパンといえば、第2次世界大戦中には激戦地となり、日米双方に夥しい戦死者を出した場所としても有名だ。僕には想像することも難しいが、国同士が時に戦うという現実がある。戦争で最前線となるのは、小さな島であったり、人里離れた地域であることがほとんどだ。これからの世界情勢がどうなっていくのか僕にはわからない。とはいえ、相変わらず世界中に軍事的な緊張があり、日本も無縁ではいられないことをわれわれは思い知らされつつある。
少し前までは、少子高齢化、東京への一極集中で、「地方は消滅する」とまで言われた。確かに地方の衰退は深刻な問題ではある。けれども、地方が消滅することは決してないと現在の僕は確信している。といっても、あまりポジティブな話ではないのが残念なのだが。
どれだけ人口が減少しようと、産業が衰退しようと、国土の隅々まで人が住んでいるということが、おそらく国防のためにはとても重要なことなのだ。少なくとも、そこに人が住み続けられるように、道路や橋といったインフラを維持し続けるだけの防衛上の理由が国にはある。意見が分かれることはあるにしても、今の国際情勢を見ると、おそらく「経済効率だけを考えて地方は置き去り」という考え方は支持されにくくなっていくだろう。
サイパンだって、決して産業が盛んな島ではない。観光業だって日本からの客が減って衰退しつつある。けれども、アメリカは高いコストを払ってあの島を守り続けている。日本と戦争をした時代も、中国との間で太平洋地域の緊張が高まっている現在も、サイパンが戦略的に極めて重要な場所だからだ。
地方は消滅することはない。なぜなら、残念ながらまだ平和な世界が実現していないから。ちょっと悲しい話ではあるが、「地方は消滅する」という悲観論に対して反論するには有効だ。
どんな理由であれ、そこに人々の暮らしがあるからには、ビジネスの可能性もあるのだ。
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