“大儲け”よりも“長期的な安定”が重要…「インフレ時代の資産防衛」に〈米国リート〉が向いている理由【投資のプロが解説】

“大儲け”よりも“長期的な安定”が重要…「インフレ時代の資産防衛」に〈米国リート〉が向いている理由【投資のプロが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

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「きしべかうさ」が示す長期的なインフレリスク

筆者は、いま世間で話題の長期的なテーマはいずれも、インフレにつながる要素を持っていると考えており、各テーマの頭文字をとって「きしべかうさ」と呼んでいます。

 

長期的なインフレのテーマ:「きしべかうさ」

【き】気候変動対策

【し】少子高齢化(需要>供給)

【べ】米中対立(新たなブロック経済)

【か】格差是正

【う】ウイルス(新たなパンデミック)

【さ】債務の増大

(出所)フィデリティ・インスティテュート

 

それぞれをみていくと、

 

【き】気候変動対策…再生可能エネルギーの使用

たとえば、コストが高い再生可能エネルギーの使用が挙げられます。生産価格の高い再生可能エネルギーの利用を正当化するためには、従来の資源価格が高止まりする必要があります。

 

また、いままでは新興国で作り、先進国で消費されていた農作物が、生産の過程で新興国の環境を害していたり、新興国のひとびとの食料生産を減らしているということであると、先進国に生産が移行・回帰することになります。それは、農作物の生産コスト上昇につながります。

 

また、オランダで農家が反発しているように、環境への配慮から畜産や酪農が制限されれば、食肉や生乳その他の乳製品の価格が上昇することも考えられます。同様に、化学肥料の使用削減を求められれば、農作物の価格は上昇します。

 

【し】少子高齢化…労働力不足による供給力の低下

簡単にいえば、少子高齢化は「食べる人の数は変わらないものの、作る人の数が減る」ことを意味します。言い換えれば、総需要は一定で、総供給が減ります。

 

日本では「少子化はデフレ」と考えられていたかもしれませんが、実際には、同時に起きていた「中国による安価な労働力の供給」が世界的なディスインフレにつながった可能性があります。

 

たしかに今後の生産性次第ではありますが、現に日本やアメリカでは労働力不足がインフレにつながっています。目下、労働力は希少な生産要素です。

 

【べ】米中対立…高い価格設定と生産コストの上昇

米中対立は「新たなブロック経済化」につながります。

 

たとえば、かつてのCOCOM(対共産圏輸出統制委員会)のように、企業は自国政府や国際機関によって「あの国には販売するな」「あの国では生産をするな」と指示されたり、あるいは、進出した先の国から「我が国から出ていけ」と命令される可能性があり、

 

A.販売市場の縮小と、B.サプライチェーンの再構築は、それぞれA.「高い価格設定」と、B.「生産コストの上昇」につながります。

 

【か】格差是正

多くの先進国や新興国では格差が拡大しています。米国の場合、約100年ぶりの格差が生じています。

 

他方で、「リベラル化」や「AI化」が進むなか、「ステークホルダー重視」「マイノリティ重視」「ベーシックインカム」などで格差の是正が進むかもしれません。

 

少なくとも、多くの労働者が職を失う可能性が高いことは、歴史が証明するところです。そのとき市民はなんらかの作用を政府や大企業に加えることで職か食を得るでしょう。

 

その過程で格差が是正され、消費性向の高い低所得者層の所得が増えれば、総需要が増える可能性が考えられます。

 

【う】ウイルス…自主的なサプライチェーン構築による生産コストの上昇

新たなパンデミックに備えて、各企業による自主的なサプライチェーンの再構築が生じれば、生産コストが上昇する可能性があります。

 

別途、世界保健機関(WHO)は、「画期的な」パンデミック(および環境)対策への支持を加盟国に呼びかけており、こうした対策が実現すれば、主要な農作物の生産が減り、価格が上昇する恐れがあるでしょう。

 

【さ】債務…政府債務の増大

多くの先進国や新興国では政府債務が増大しています。政府債務の増大は、インフレ期待につながる主要な要素です。為政者はたいてい増税ではなく、インフレを選択してきました。

 

このとおり、いま世間で話題の長期的なテーマはいずれもインフレを示唆していると思われます。

 

今後、こうした状況が生じる可能性・リスクに備えるならば、実物資産に投資をする投資信託への分散が一案です。

 

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