今回は、「廃業」を考える中小企業経営者の割合を見ていきます。※本連載は、松村総合法律事務所の弁護士、松村正哲氏、税理士法人髙野総合会計事務所シニアパートナーの小宮孝之氏、株式会社ストライク代表取締役の荒井邦彦氏の共著『よくわかる中小企業の継ぎ方、売り方、たたみ方』(ウェッジ)の中から一部を抜粋し、会社経営の「卒業」を主なテーマとして、事業承継 or 廃業の判断基準などをご紹介します。
自分の代での廃業を検討する「小規模事業経営者」
企業規模別での現経営者の事業継続の意思についての調査結果があります。
これによると、中規模企業の場合、「事業を何らかの形で他者に引き継ぎたい」と考えている割合は63.5%です。一方で、「自分の代で廃業することもやむを得ない」と考えている割合は5.4%にとどまっています。
他方、小規模事業者の場合、「事業を何らかの形で他者に引き継ぎたい」と考えている割合が42.7%にとどまっています。一方で、「自分の代で廃業することもやむを得ない」と考えている割合は実に21.7%にも上ります。小規模事業者の経営者は、中規模企業と比べて、自分の代での廃業を検討する割合が圧倒的に多いのです。
中規模事業者と比較すると、小規模事業者は、事業の収益性が高くなく、事業の将来性が低いため、事業の承継者を探すのが困難になっていると考えられます。また、反対の見方をすれば、事業の収益性が低いため、結果として小規模事業にとどまっているというともいえるでしょう。
このような事情から、小規模事業者においては、社長が交代せずに、じわじわと高齢化しているのです。
【図表 現経営者の事業継続の意思】
「事業承継か、廃業か」の判断は待ったなしの状況
以上、いろいろなデータを紹介してきましたが、これらのデータはいずれも、中小企業の社長が年を取り高齢化する一方で、後継者が不足して、社長の交代が円滑になされていないことを表しています。
中小企業の社長にとって、事業を跡取りや第三者に承継するのか、または自分の代で事業をやめて廃業するのか、という判断が待ったなしの状況になっています。中小企業の事業承継や廃業が、社会全体にとって重要な課題となっています。
松村総合法律事務所
弁護士
国内有数の大手法律事務所のパートナー弁護士を経て、2015年、「最高のリーガルサービスを、リーズナブルな価格でご提供する」を事務所の理念として、松村総合法律事務所を開設。
事業承継、M&A、事業再生を主要な業務としつつ、企業法務全般を取り扱う。
2008年~2012年、駿河台大学法務研究科非常勤講師(倒産法)を務める。
主要な受賞歴として、Chambers Global 2006、及びChambers Global 2005-06において、Corporate/M&Aの分野で高い評価を得る。
多数の会社更生、民事再生等の案件も手がけており、三光汽船のDIP型会社更生事件では、法律家アドバイザーを務めた。
主な著書・論文に、『中小企業の継ぎ方、売り方、たたみ方』(ウェッジ)、『事業再生の迅速化』、『倒産法全書 上巻・下巻』(いずれも商事法務)、『論点体型 会社法4 株式会社Ⅳ(定款変更・事業譲渡・解散・清算)、持分会社』(第一法規)、『総特集 条件緩和企業の債権管理・回収』(『ターンアラウンドマネージャー』銀行研修社)他、多数。
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連載事業承継、M&A、廃業・・・会社経営からの「卒業」
税理士法人髙野総合会計事務所 シニアパートナー
公認会計士・税理士
法人の会計税務コンサルティングに精通しているFAS部門に所属。事業再生やM&A、移転価格税制、税務会計コンサルティング全般のほか、中小企業の事業承継、経営コンサルティングなど幅広いジャンルのサポートを行っている。
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株式会社ストライク 代表取締役
公認会計士・税理士
1997年にM&A仲介・助言専門会社、株式会社ストライクを設立し、代表取締役に就任。インターネット上に日本初のM&A市場「SMART」を設立し、数多くの中小企業のM&Aを仲介するほか、企業評価やデューディリジェンスに携わる。
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