<経営者の公的年金>「社長」のほうが「個人事業主」より“断然お得”に見えるが…60歳以降も働くなら「在職老齢年金」に注意【税理士が解説】

<経営者の公的年金>「社長」のほうが「個人事業主」より“断然お得”に見えるが…60歳以降も働くなら「在職老齢年金」に注意【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

経営者の公的年金は、「会社の社長」が加入する「厚生年金」と「個人事業主」が加入する「国民年金」とで大きく異なります。各年金の保険料と受け取り額の関係性等について、中小企業の財務・税務に詳しい税理士・関根俊輔氏の著書『改訂6版 個人事業と株式会社のメリット・デメリットがぜんぶわかる本』(新星出版社)から一部抜粋して紹介します。

受け取る「年金支給額」はどう違うか

ただし、厚生年金は、保険料の負担は大きいものの、これに見合うように十分な給付が約束されています。老後(年金の受給開始後)にもらえる年金額は国民年金の額を上回りますし、障害年金や遺族年金の支給額も、国民年金のそれを上回ります。

 

なお、厚生年金の場合、保険料は半分は会社が負担してくれて、しかも、会社負担分についても「法定福利費」として会社の経費に計上されるというメリットもあります。

 

これらのことを考慮すると、基本的には、社長のほうが個人事業主よりも断然お得ということになります。

 

国民年金と厚生年金の受給額の違いを、ざっくりと比べてみましょう。国民年金を多くもらうコツは、納付月数を増やすことです。これに対し、厚生年金を多くもらうコツは、納付月数もさることながら、お給料の月額を多くもらうことです。

 

まず、国民年金で受け取れる将来の年金額を試算してみましょう。国民年金で最大もらえる額は、今のところ年額で約80万円です。これは40年、つまり480ヵ月間支払い続けた場合の金額であり、支払い期間がこれより短い場合は、保険料を支払った月数の割合に応じて支給されます。

 

たとえば、480ヵ月のうち360ヵ月分だけ支払ったのであれば、〈80万円×(360ヵ月÷480ヵ月)=約60万円〉となります。なお、今後は10年以上支払わなければ(免除期間を含む)、いっさい支給されないので注意してください。

 

次に、厚生年金の受給額を計算してみます。厚生年金は「定額部分」と「報酬比例部分」「加給年金」の3つに分かれます。ここでは、およその最低額を計算するので、「定額部分」は国民年金の支給額とほぼ同じとします。また「加給年金」はないものとします。

 

最後に残った「報酬比例部分」は概ね〈平均の給料月額×7÷1,000×支払った月数〉で試算できます。

 

たとえば、平均月収が40万円で、360カ月分を支払ったのであれば〈40万円×7÷1,000×360=約100万円〉です。国民年金と比べると、毎年約100万円も多く年金がもらえることになります([図表2]参照)。

 

※1:月収の平均が40万円と仮定した場合 ※2:1年間でもらえる年金額をあらわしている
[図表2]将来もらえる年金額を計算してみよう(概算) ※1:月収の平均が40万円と仮定
※2:1年間でもらえる年金額

 

もし、自分の納付月数がわからないとか、もっと詳細なシミュレーションをしたい場合は、日本年金機構から毎年送付されてくる「年金定期便」を見ると、より精度の高い試算ができます。

 

ところで、じつは残念なことに厚生年金には決定的なデメリットがあります。それは、60歳以降もなお社会保険に入りながら、立派に会社を運営していると、「在職者の老齢厚生年金」(在職老齢年金)という制度にひっかかってしまうことです。

 

これは、社会保険に加入するくらい働いていて、給料をもらっている人には、なるべく年金の支給を我慢してもらいましょう、という趣旨の制度です。最悪の場合、年金をまったくもらえない時期も出てきます。

 

本記事では詳細には立ち入りませんが、この制度によって「もらえるはずの年金が、もらえない」ということがないように、受給開始年齢になる前に、給料の額を調整する必要もあります。

 

 

関根 俊輔

税理士法人ゼニックス・コンサルティング

税理士

 

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