<経営者の公的年金>「社長」のほうが「個人事業主」より“断然お得”に見えるが…60歳以降も働くなら「在職老齢年金」に注意【税理士が解説】

<経営者の公的年金>「社長」のほうが「個人事業主」より“断然お得”に見えるが…60歳以降も働くなら「在職老齢年金」に注意【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

経営者の公的年金は、「会社の社長」が加入する「厚生年金」と「個人事業主」が加入する「国民年金」とで大きく異なります。各年金の保険料と受け取り額の関係性等について、中小企業の財務・税務に詳しい税理士・関根俊輔氏の著書『改訂6版 個人事業と株式会社のメリット・デメリットがぜんぶわかる本』(新星出版社)から一部抜粋して紹介します。

個人事業主は「国民年金」、会社の社長は「厚生年金」に入る

公的な年金保険は、老後の生活を支えてくれる大切な制度です。

 

会社の社長をはじめ、会社から給料をもらう人は、基本的に、社会保険の健康保険と厚生年金保険は、セットで加入しなくてはなりません。つまり、医療保険は健康保険に、年金保険は厚生年金保険に加入します。

 

これに対して個人事業主は、社会保険には入れないので、国民健康保険と国民年金に加入することになります。

 

国民年金と厚生年金との違いをひと口でいうと、「保険料を多く払って、年金が多く戻ってくる」ほうが厚生年金になります。

 

国民年金の毎月の保険料負担は約1万6,520円で、もし配偶者が職に就いていなくても、その分も納付義務が発生します。一方、厚生年金の毎月の保険料負担は、会社負担と合わせて、給与月額に約18.3%をかけた金額です。支払う保険料が国民年金よりも高くなりますが、その分、受け取れる年金額も高くなります([図表1]参照)。

 

[図表1]厚生年金と国民年金の制度内容

 

たとえば、月給40万円の場合、厚生年金保険料は約7万5,000円となり、これを会社と加入者本人が折半して納めます。ちなみに、同じ条件で健康保険の保険料を計算すると、約4万7,000円となり、厚生年金保険料との合計の月額はなんと約12万円にもなります。

 

「個人事業」と「社長1人会社」では年金・健康保険料の差は?

個人事業主が支払う国民健康保険・国民年金の合計保険料と、社長1人だけの会社が支払う健康保険・厚生年金保険の合計保険料は、いくら違うのか見てみましょう。

 

健康保険も年金も、加入者の月給(標準報酬月額)によって、支払う保険料が違ってきます。

 

まず、健康保険の月額保険料で比べると、たとえば月給30万円の会社社長が支払う健康保険料は、会社負担分と自己負担分を合わせて約3万円。一方、同じ月給(所得金額)30万円でも個人事業主の場合は、支払う健康保険料(国民健康保険料)は約4.1万円となり、個人事業主のほうが約1.1万円多く保険料を支払うことになります。

 

ところが、月給60万円となると話は違ってきます。月給60万円の会社社長の健康保険料(会社負担+自己負担)は約6万円で、同じ月給(所得金額)60万円の個人事業主の健康保険料は約5万円となり、会社社長のほうが約1万円多く保険料を支払うことになるのです([図表3]参照)。

 

※介護保険料は無視 ※健康保険料率:10% の場合 ※国民健康保険料:地域によって異なるため平均的な金額を例示
[図表3]法人化した場合の健康保険料の増減 ※介護保険料は無視、健康保険料率10%、国民健康保険料は平均的な金額を例示

 

また、年金の月額保険料は、会社社長が支払う年金保険料(会社負担+自己負担)のほうが、個人事業主が支払う年金保険料よりも多くなります([図表4]参照)。

 

※厚生年金を支払った場合、将来「老齢厚生年金」をプラスして受けとれる ※厚生年金保険料率:18.3% の場合
[図表4]法人化した場合の年金保険料の増加※厚生年金保険料率:18.3%の場合

 

結局、年間トータルで見ると、会社社長のほうが個人事業主よりも保険料を多く払うことになります([図表5]参照)。
 
※ただし、厚生年金を支払った場合、将来「老齢厚生年金」をプラスして受けとれる
[図表5]法人化した場合の社会保険料(健康保険料、年金保険料)の増加 ※ただし、厚生年金を支払った場合、将来「老齢厚生年金」をプラスして受けとれる

 

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