親の死後、遺言書に自分の名前がなかったら…「遺留分」or「寄与分」請求で遺産を相続するという正攻法【経済ジャーナリストが解説】

親の死後、遺言書に自分の名前がなかったら…「遺留分」or「寄与分」請求で遺産を相続するという正攻法【経済ジャーナリストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「相続」と聞くと大変なイメージがあり、その場に直面するまで先延ばしにしてしまいがち。しかし、正しい知識を身に付け、粛々と備えておくことで、いざ相続をする際にも慌てずに対応することができます。“家計の専門家”として活躍する、経済ジャーナリストの荻原博子氏が、「老後」にまつわる心配事と上手く向き合うための必須知識を伝授します。

介護に貢献した“相続権のない”親族は、「寄与分」を請求できる

では、夫の親を一生懸命介護したのに、「遺言書」に記載がなければ妻は報われないのでしょうか?

 

改正民法で2019年7月から、相続人でない親族でも、無償で介護するなどの労力で貢献した場合、それを「寄与分」と認め、相続の開始後に相続人に対して金銭(特別寄与料)を請求できることになりました。対象となるのは、6親等以内の血族と3親等以内の姻族です。

 

65歳以上の世帯の貯蓄額の中央値は1,588万円(2021年総務省家計調査)。仮に、これを3人の相続者で分けると1人約500万円。財産が多額だと、寄与度の評価も大きいかもしれませんが、嫁の寄与度が、相続する人の額を上回ることはないでしょう。

 

ですから、かなり献身的に介護しても相続財産の1割程度でしょうが、こういう制度があることを知っておくと、介護への心持ちも変わってくるかもしれません。

 

遺産を巡り裁判沙汰になる「争族」が年々増加

司法統計によると、相続に関する裁判所の相談件数は2000年には年間8,889件程度だったのが、2019年には1万5,842件に達しています。20年間で約1.8倍に増えているのです。

 

しかも、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件の3分の1は遺産額1,000万円以下。1,000万円と言えば、相続税がかからない範囲のお金で、高齢者の貯蓄額の中央値から見ればけっして大きい額とは言えません。

 

でも、この金額を巡って兄弟親族が裁判で争っているのです。二度と兄弟仲の修復もできなくなるかもしれないこんな争いを起こさないためにも、少しでも親に財産があるなら、「遺言書」ではっきり遺志を伝えておいてもらうべきです。

 

 

荻原 博子

経済ジャーナリスト

 

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※本連載は荻原 博子氏による著書『老後の心配はおやめなさい』(新潮社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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