「パレスチナ問題」はここから始まった?第一次世界大戦で苦境のイギリスが各国と結んだ“驚愕”の協定【世界史】

「パレスチナ問題」はここから始まった?第一次世界大戦で苦境のイギリスが各国と結んだ“驚愕”の協定【世界史】
(※写真はイメージです/PIXTA)

第一次世界大戦の最中、イギリスは戦況を有利に進めるために各国に戦争協力を求めます。一方では国の独立を約束し、他方ではその国を分割して領有する協定を結ぶというイギリスの外交は、現在の中東問題の火種を生みました。『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)の著者で河合塾講師の平尾雅規氏が解説します。

インドにも自治を約束したが、反故にするイギリス

大戦中のイギリスは、インド人にも戦後の自治を約束し協力を求めました。100万人以上のインド人がイギリス軍に入隊し、祖国のために戦ったんですが、戦後の1919年インド統治法で認められた自治は名目的なものでした。

 

怒れるインド人を、イギリスはローラット法で押さえつけます(「令状なしの逮捕、裁判抜きの投獄」を定めたこの法、もはや法治国家の体すらなしていませんよね…)。

 

こうなれば、インド人とイギリスの衝突は不可避なわけで、無防備の民衆が発砲をうけて多数の死傷者が出ました

※ イギリスとインド側が主張する死傷者数には開きがある

 

この事件と同時期、「イギリスに断固報復すべきだ!」と憤る民衆に対して「暴力を用いても、互いが憎み合って悪循環になるだけ。我々は野蛮なイギリス人と同レベルになってはいけない」と非暴力・不服従(サティヤーグラハ)による抵抗を説いたのがガンディーでした。

 

店舗や工場を一斉休業して断食し※1、自ら糸を紡いでイギリス製品を不買し、選挙をボイコット。イギリス人に暴力で取り締まられても決して反撃しない※2

※1 ハルタール

※2 無抵抗のインド人への暴力は、国際的非難を呼んだ

 

はじめは消極的な印象だったこの戦術も、次第にインドの大衆を巻き込み、また一時はイスラーム教徒の全インド=ムスリム連盟も共闘する一大ムーヴメントに。

 

民族運動の最大組織国民会議派も、1929年のラホール大会で非暴力・不服従の方針を採用しました。「完全独立プールナスワラージ)」を採択したこの大会の中心にいたのが、のちの初代首相ネルーですね。

 

疲弊したイギリスはインドへの譲歩を余儀なくされていき、ついに1935年インド統治法において州レベルの自治は認められることになりましたが「独立」はいまだならず、という状況です。

※ ≒内政

 

 

平尾 雅規

河合塾

世界史科講師

 

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※本連載は、平尾雅規氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる世界史

大人の教養 面白いほどわかる世界史

平尾 雅規

KADOKAWA

「なぜ、戦争や紛争が絶えないのか?」「なぜ、国によって考え方・風習・生活が違うのか?」 ……答えは高校時代に習った世界史の授業のなかにあったはずなのに、大人になったいま、その答えがすっぽりと抜け落ちていません…

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