「パレスチナ問題」はここから始まった?第一次世界大戦で苦境のイギリスが各国と結んだ“驚愕”の協定【世界史】

「パレスチナ問題」はここから始まった?第一次世界大戦で苦境のイギリスが各国と結んだ“驚愕”の協定【世界史】
(※写真はイメージです/PIXTA)

第一次世界大戦の最中、イギリスは戦況を有利に進めるために各国に戦争協力を求めます。一方では国の独立を約束し、他方ではその国を分割して領有する協定を結ぶというイギリスの外交は、現在の中東問題の火種を生みました。『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)の著者で河合塾講師の平尾雅規氏が解説します。

オスマン帝国の滅亡…新国家では「クルド人問題」が勃発

イギリスに従属していた⑤エジプトでも民族運動が高まり、イギリスは1922年に独立を認めました。とはいえスエズ運河地帯の駐兵権、エジプト防衛権、スーダン統治権はイギリスが保留するという形式的な独立でした。

 

ではオスマン帝国の本丸①小アジアです。大戦に敗れて死に体のオスマン帝国で軍人ムスタファ=ケマルが立ち上がり、アンカラに新政府を建てて侵攻してきたギリシア軍と戦いました。

 

一方、1920年に結ばれたセーヴル条約でオスマン帝国に残されたのは、ヨーロッパ側はイスタンブルだけ、小アジア側もわずかな領土のみ…。まさに亡国です。

※ アラブ人地域は英仏に分配されている

 

ムスタファ=ケマルは、トルコをゼロから再生するしかないと決意し、スルタンを退位させ、ここにオスマン帝国は滅亡しました

※ 600年以上の歴史に幕を閉じた

 

ムスタファ=ケマルの指導力を見たイギリスはアンカラ政府を認めざるをえなくなります。ここでケマルは、多民族国家で難儀するよりも「トルコ人の国民国家」としてスリム化しようという判断を下しオスマン帝国時代のアラブ人地域をスパっと切り捨てました。

※ これを「トルコ主義」という

 

でも実際は単一民族ではなく、多くのクルド人が居住していました。セーヴル条約では民族自決を反映してクルド人の自治が持ち上がったのですが、ムスタファ=ケマルはこれをもみ消してトルコ領内に押しとどめます。これが現在まで続く「国家を持たない最大の民族」クルド人問題です

 

同年、ムスタファ=ケマルを大統領としてトルコ共和国が成立。「アタテュルク」という尊称を贈られた彼は西欧化を進めました。

 

まずは政教分離で、イスラーム法に代わって憲法を制定しました。

 

続いてイスラーム世界において地位が低かった女性の地位を高め、女性参政権が実現します。

 

さらには文字と暦からもイスラーム色を排除する徹底ぶりでした。

 

政教一致のサウジアラビアとは好対照ですね。ただ、政教分離の観点でモスクから博物館に転用されていた、壮大な「アヤソフィア」が2020年にモスクに戻されました

 

背後には、モスク復活を求める保守層からの支持を得たい大統領の狙いがある、という憶測がもっぱらです。

 

イランのカージャール朝は、第一次世界大戦でイギリスとロシアに占領されてしまいます。ロシアは革命が起こって撤退するものの、イギリスは戦後まで居座りました。

※ 英露に対抗するため密かにドイツと通じていた

 

ここで、トルコのムスタファ=ケマルに相当する存在が登場。軍人レザー=ハーンで、自らパフレヴィー朝を創始して国王になりました。西欧化改革を進めたところはトルコと共通していますね。

 

また彼は、国号をペルシアからイランと改めました。イラン人の国民意識を考えるうえで、

※ Iran=アーリヤ人(高貴な人たち)の国

 

インド=ヨーロッパ語系のイラン人(ペルシア人)とセム語系のアラブ人

 

が別の民族であることは、ぜひとも知っておいていただきたいです。

 

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※本連載は、平尾雅規氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる世界史

大人の教養 面白いほどわかる世界史

平尾 雅規

KADOKAWA

「なぜ、戦争や紛争が絶えないのか?」「なぜ、国によって考え方・風習・生活が違うのか?」 ……答えは高校時代に習った世界史の授業のなかにあったはずなのに、大人になったいま、その答えがすっぽりと抜け落ちていません…

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