官業払下げにより、のちの「財閥」の基盤が出来上がる
財政整理のもう一つの柱は官営事業払下げですが、これは歳出削減とともに、払下げを受けた民間産業資本の育成にもつながりました。実は、工場払下げ概則の廃止によって厳しい条件が無くなり、かえって払下げが増加しました。
三井・三菱などの政商は、このとき払い下げを受けた鉱山や工場などを基盤に資本を蓄積し、のちに財閥となる基盤を作っていきました。
唯一の発券銀行として「日本銀行」が設立される
国立銀行条例に基づく兌換制度(紙幣価値を正貨(金・銀)で保障)の試みは失敗したので、松方財政では政策と直結する中央銀行に兌換させるため、唯一の発券銀行として通貨供給の役割を持つ日本銀行(1882)を設立しました。
そして、国立銀行条例の再改正で、国立銀行の紙幣発行を停止しました(国立銀行は通常の預金業務を行う普通銀行に転換)。これらと並行して、余った政府所有紙幣のうち処分しなかった分で正貨(銀)を買い入れました(正貨蓄積)。そして、不換紙幣整理で紙幣価値が上昇し、同額の銀と交換できるようになると、日本銀行が銀兌換券を発行し(1885)、銀本位制が確立しました。
また、デフレで日本物品が安価になると輸出が増え、その一方で外国物品の輸入は減少し、輸出超過(貿易黒字)の傾向がでてきました。
デフレ不況により農民の間でも格差が生まれ、資本主義化が進む
デフレ不況が広がると、米価や繭価が下落して農民の収入が減少する一方、支払う地租は定額なので、中小規模の自作農(土地を持つ)が困窮し、地租負担を避けて土地を売り、小作農(土地を持たずに借りる)に転落する者が増えました。こうした貧農の増加は、自由民権運動の激化事件を発生させました。のち、小作農の子女は家計補助を目的とする出稼ぎで、工場や鉱山などの賃金労働者となりました。
一方、地主(豪農)は、手放された土地を集積し、寄生地主に成長する者も現れました。「寄生」は土地に寄生するという意味で、広大な所有地を貸して徴収する地代(小作料など)の収入だけで生計を立てられる者を指します。のち、寄生地主は工場経営や株式投資などで資本家となりました。
こうして、松方財政を契機に形成されていった寄生地主制は、資本主義との結び付きを強めていき、企業勃興(1886~89)や1890年代以降の産業革命を支えたのです。
山中 裕典
河合塾/東進ハイスクール・東進衛星予備校
講師
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
注目のセミナー情報
【税金】11月27日(水)開催
~来年の手取り収入を増やす方法~
「富裕層を熟知した税理士」が考案する
2025年に向けて今やるべき『節税』×『資産形成』
【海外不動産】11月27日(水)開催
10年間「年10%」の利回り保証
Wyndham最上位クラス「DOLCE」第一期募集開始!
【事業投資】11月28日(木)開催
故障・老朽化・発電効率低下…放置している太陽光発電所をどうする!?
オムロンの手厚いサポート&最新機種の導入《投資利回り10%》継続を実現!
最後まで取りつくす《残FIT期間》収益最大化計画