「リーダーが主導するPDCAサイクルの弊害
トップダウン型組織では、リーダーが組織の「Plan」(組織の事業計画)を立て、部下に役割を割り振り、「Do」(実行)させ、結果をリーダーが「Check」(評価)、「Action」(改善)し、次のPlanを決めるというサイクルでPDCAを回します。
「決めるのはリーダー」「実行は部下」という、明確な役割分担が存在します。
正解がなく変化が早い時代では、立てたPlanが正しいかどうかは、やってみなければ分かりません。逆に言うと、やってみると分かることがあります。Planを立てたら、できるだけ速やかに実行し、その結果を振り返り改善し、次のPlanに活かすこと……「やっては直し、やっては直し」の素早い繰り返しが求められます。
しかし、リーダー主導でPDCAを回せば回すほど、部下はリーダーが作り出す変化に巻き込まれてしまいます。やがて、部下は疲弊し「リーダーには一貫性がない。また違うことを言い出した」と不満を持つようになります。リーダーが頑張るほどに、部下との間の溝が深まるという悲劇が起こるのです。
私は、このような場面を、コロナ禍で何度も見てきました。不満を恐れたリーダーが、必要以上に綿密なPlanを立てるようになり、生命線とも言うべきスピード感を失った組織もあります。部下がPlanに参画しないと理解度の低下も招きます。
アメリカ国立訓練研究所の研究によると、学習定着率は、「聞いたことの5%」「読んだことの10%」「見たことの20%」「対話したことの50%」「自分で体験したことの75%」「他人に教えたことの90%」という結果が得られています。
また、人は物事に参画した分だけ、それを自分事にしますので、リーダーが立てたPlanを、経営計画発表会などで一方的に聞くだけでは自分事にすることは難しくなります。自分事にならないと、自発性や内発的なモチベーションが低下します。その様子を見たリーダーが、「部下には頼れない」と感じ、トップダウンをより強化するという悪循環に陥るケースもあります。
変化が早く正解がない時代において、PDCAをしっかり回す優秀なリーダーほど、部下の自発性や組織パフォーマンスを低下させてしまう背景には、こうした理由があるのです。
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