「参画型経営」で自発性も創造性もチームワークも高まる
これからは、PDCAに部下が関わる「参画型経営」が求められると考えています。部下が組織のPDCAに参画するメリットは数多くあります。
組織のPlanづくりに参画することで、リーダー1人の限界を超えた豊かなアイデアが生まれます。Planへの理解が深まるとともに、それを自分事と捉え、自発性と創造性が高まります。
Doの段階では、全体のPlanを理解しているので、自分の担当領域はもちろん、仲間のそれにも関心を持つようになります。チームワークが向上し、自発的な助け合いが活性化します。サボっている仲間がいれば、叱咤するようにもなるでしょう。
PDCAを回し続けるのは非常に根気がいることですが、仲間と取り組むことで粘り強さが生まれます。
何よりも仕事が愉しくなります。仕事から得られる喜びが、次の行動の燃料になるという、持続可能なモチベーション生産システムが稼働します。リーダーが部下のヤル気を引き出す必要性は減るでしょう。
ただし、このような理想に到達するためには時間がかかります。最初のうちは、Planの段階で活発な対話が起きないかもしれません。
・メンバーが発言しないので、結局リーダーが独断で決めてしまう。
・いつも一部の人たちが仕切っている。
・話し合いが活性化しないので、多数決で決めることが多い。
・みんなが好き勝手に発言し、まとまらない。
Doの段階でも、困っている仲間がいても助けなかったり、自分が困っていても助けを求めなかったりするかもしれません。Checkをせずに、やりっぱなしになることもあります。
リーダーには、自由に発言できる心理的安全性の高い風土を醸成するとともに、部下に発言や助け合いを促したり、自発的な行動を称賛するなどし、根気よくチームを育てることが求められます。
“社員参画”のPDCAでパンデミックを乗り越えた企業
社員の自律的なPDCAでコロナ禍を乗り越えた、私の経営支援先企業の事例を紹介します。
大阪市に、劇団やプロ球団チアの特注コスチューム、アスリート向けのスポーツウェアを企画製造する、N社という社員数30名ほどのメーカーがあります。同社では、2020年、パンデミックの影響を受けて受注が激減しました。社長は、先行きが見えない不安を抱えながら、資金繰りに走りました。
そんなある日、社員からマスク製造の提案を受けます。社長が資金繰りに奔走している間に自発的にミーティングを開き、マスク製造のアイデアが出たそうです。
同社には優秀なデザイナーがいますし、質の高い素材があります。ただのマスクではなく、小顔効果、保湿効果、着け心地がいい、柄がユニーク、など様々なマスクを開発し、2020年4月に販売を開始しました。
この時期は、マスクが品薄になり、インターネット上で高額で取引されたり、政府支給のマスクの配布が進まなかったりと混乱していた時期でした。そんな中で、どこよりも早い対応をした同社を、多くのメディアが取り上げました。
結果的に、パンデミック発生から約1年間で、10万枚以上を販売しました。社長は「トップダウンでPDCAを回す風土では、このようなアイデアもスピード感も生まれなかっただろう」と社員に感謝していました。何よりも「社員が支えてくれるから、もう孤独じゃない」と語っていたのが印象に残っています。
社員が、自分たちでPDCAを回す愉しさを覚えたことで、さらに自律性が育ちました。2022年には、女性社員を中心に、女性特有の健康課題を解決するための新ブランドを立ち上げるまでに成長したのです。
組織の育成には時間も労力も要します。しかし、正しい手順で根気よく取り組めば、努力は必ず報われます。自分1人で組織を運営することに限界を感じたら、PDCAのあり方を今一度振り返り、自律への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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