中小企業の9割で賃上げも…人手不足は防げず
人手不足に陥っている企業が過去最多となったことが、日本商工会議所の調査「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」で明らかになりました。
人手不足の防衛策として、89.1%の企業が「既存社員の賃上げ、募集賃金の引上げ」を実施したにも関わらずです(参照:厚生労働省、令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況)。
他社を圧倒するような賃上げができる企業は、ほんの一部です。ほとんどの企業が行っている普通の賃上げでは、人手不足の解消に効果を発揮しないことが浮き彫りになりました。
一方、東京商工リサーチの調査によると、2023年1月〜11月に、人件費高騰による倒産が54件起きています(昨年は7件)。人手不足の防衛が、文字通り命がけの対策になっているのです。
中小企業は、今後も続くであろう人材確保と賃上げの板挟みから、いかに脱却すべきでしょうか? 本記事では、そのための視点と実務について解説したいと思います。
頭数を揃える安易な採用は、さらなる人手不足を呼ぶ
日本商工会議所の調査では、人手不足の企業の約8割が、足りない人員のカバーを、現有人員で行っていることも明らかになりました。人員が足りなければ、今いるメンバーで何とかするしかありませんが、現有人員が日々の業務で精一杯になると、未来をつくる重要な仕事ができなくなってしまいます。
現に、同調査では、現有社員でやりくりをする弊害として、「やむを得ず事業を縮小・廃止した」「新規事業の立ち上げを見送った」という企業がおよそ2割ありました。
求職者が会社を選ぶ基準は、賃金などの待遇面ばかりではありません。むしろ今は、企業の将来性や、働き甲斐といった要因を重視する人が増えています。事業の縮小、新規事業の見送りは、優秀な人材を取り逃がすことになります。
賃上げをしても人手不足が解消されないからといって、「とにかく頭数を揃えよう」と安易な採用をする企業がありますが、それは最も危険です。採用基準が甘くなれば、自社の風土に合わない人材を採用することになります。
そういう人はすぐに離職してしまいます。「一時的に」という約束で、現有社員で耐えしのいだのに、一向に人手不足が改善されず、既存社員の離職まで増えたという会社もあります。
一時しのぎをすると、問題の根本解決を遅らせ、企業価値が上がらず、賃上げも人手不足の解消もできないという事態に陥る危険性があります。
急がば回れと言いますが、こういう時だからこそ、採用戦略を土台から築き上げる必要があると考えています。
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