(※写真はイメージです/PIXTA)

父が亡くなり、遺された財産を母と子といった相続人で分配する場合、「不動産+貯蓄」の総額を均等に分けるのが一般的です。しかし、均等に分けるには不動産を売却する必要があったり、代償金を支払う必要があったりと、トラブルに発展するケースが少なくありません。そこで活用したいのが「配偶者居住権」だと、司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏はいいます。具体的な事例をもとにみていきましょう。

配偶者居住権には、デメリットも…

しかし、配偶者居住権はここまでみてきたようなメリットばかりではありません。特に、権利取得者の年齢によってはデメリットとなる場合もあるので注意が必要です。

 

たとえば、幸子さんが60歳だった場合、自宅を相続した隼人さんは、幸子さんが生き続けるあいだはずっと所有者として固定資産税を支払わなければなりません。建物に関しては幸子さんの負担となりますが、土地に関しての固定資産税は所有者である隼人さんが負担することとなるからです。

 

所有者が子育て世代である場合などは特に、「親の固定資産税を長年支払い続ける」というのが大きな負担となるでしょう。

 

また、配偶者居住権を取得したあと、妻が認知症などにより老人ホームに居住することになる可能性も考えられます。老人ホームへの入居には多額な費用がかかるため、自宅を売却してその費用に当てることが多いのですが、配偶者居住権はあくまでも自宅に住む権利ですから、自由に売却することはできません。

 

もちろん、さまざまな要因から、配偶者居住権を途中で放棄することは可能です。しかし、配偶者居住権を放棄すると、所有者に対して贈与したものとみなされます。したがって、配偶者居住権を放棄すると贈与税が課税されてしまうため注意が必要です。

 

まとめ

配偶者居住権は2018年の民法改正によって創設され、2020年に施行された比較的新しい制度です。

 

のこされた配偶者にとってメリットは大きいのですが、状況によってはデメリットもあるため、取得する際にはメリット・デメリットをしっかり把握して判断する必要があります。

 

したがって、配偶者居住権をお考えの方は、被相続人が元気なうちから専門家に相談することをおすすめします。

 

 

加陽 麻里布

司法書士法人永田町事務所

代表司法書士

 

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