(※写真はイメージです/PIXTA)

父が亡くなり、遺された財産を母と子といった相続人で分配する場合、「不動産+貯蓄」の総額を均等に分けるのが一般的です。しかし、均等に分けるには不動産を売却する必要があったり、代償金を支払う必要があったりと、トラブルに発展するケースが少なくありません。そこで活用したいのが「配偶者居住権」だと、司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏はいいます。具体的な事例をもとにみていきましょう。

どういうこと!?…夫の死後、妻が絶句した遺言書の内容

東京都内に住む井上忠志さん(仮名・75歳)は、同い年の幸子さんと郊外のご自宅で仲睦まじく暮らしていました。

 

一人息子の隼人さん(55歳)はすでに独立し遠方にいましたが、お盆休みや正月などのまとまった休みになると奥様とお子さんを連れて帰省するのが恒例。とても良好な家族関係が続いていました。

 

そんななか、忠志さんの持病が突然悪化。そのまま自宅で倒れ、帰らぬ人となってしまいました。ご近所でもおしどり夫婦と評判で、夫が大好きだった幸子さんは深い悲しみに暮れ、すっかり肩を落としてしまいました。

 

息子のサポートもあり、なんとか無事にお葬式を終え、さまざまな手続きを済ませた幸子さん。息子が帰る前に忠志さんの遺品整理をしようと、2人で洋服ダンスや押入れの整理を始めました。

 

「この封筒なんだろう?」

 

隼人さんが、忠志さんの引き出しから茶封筒を出してきました。よく見るとそこには、「遺言」と書かれています。幸子さんは、忠志さんが遺言書をのこしていたとは知らず、驚きました。

 

忠志さんの遺産は、3,000万円のご自宅と、数百万円の貯金だけです。そのため、今後も大好きな夫との思い出がたくさん詰まった自宅で暮らし、年金と少しの貯金を切り崩しながら余生を過ごそうと決めていたので、相続に関してはまったく考えていませんでした。

 

しかし……。家庭裁判所で、裁判官立ち合いのもと遺言書を開封し読んだところ、幸子さんは絶句。

※ “遺言書の保管者又はこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりません。(中略)検認期日には、申立人から遺言書を提出していただき、出席した相続人等の立会のもと、裁判官は、封がされた遺言書については開封の上、遺言書を検認します(封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています)”
出所:裁判所「遺言書の検認」
(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html)

 

ちょっと! どういうこと!?

 

忠志さんの遺言書には、「自宅の名義は息子にすること」と書いてあったのです。

 

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