生命保険に「保険金500万円×法定相続人数」で加入して「相続対策」をしたつもりの父…逝去後に長男、涙「お父さん、ひどいよ」【税理士が解説】

生命保険に「保険金500万円×法定相続人数」で加入して「相続対策」をしたつもりの父…逝去後に長男、涙「お父さん、ひどいよ」【税理士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

「相続対策」としてよく用いられる方法の一つが、生命保険に、相続税の非課税枠である「500万円×法定相続人数」の額で加入する方法です。しかし、税金のみにとらわれ「受取人を誰にするか」の設定を間違えると、「相続争い」の火種になる可能性があります。保険会社の担当者や税理士でさえ誤解していることがあるので、注意が必要です。税理士の黒瀧泰介氏(税理士法人グランサーズ 共同代表)が解説します。

相続対策は「相続税対策」だけではない

相続対策は「相続税対策」だけではありません。以下の3つにすべて目配りする必要があります。

 

【相続対策の3つの内容】

1. 相続税対策(相続財産の評価額を引き下げる)

2. 相続争いの予防(遺留分対策)

3. 相続税の納税資金準備

 

生命保険を活用する場合も、これら3つの問題点にどう対処するかという視点が必要です。

 

相続対策に特化した金融商品「一時払い終身保険」とは

これらすべてに対応している保険は「一時払い終身保険」です。この保険は、大ざっぱないい方をすれば、保険料と保険金額がほぼ同額で、いったん加入すれば一生涯保障が続く保険です。

 

一時払い終身保険は、保険会社にもよりますが90歳まで加入できるものもあります。また、重い持病がある人や要介護状態の人でも、有効に意思表示できる能力さえあれば、加入することができます。

 

なお、「一時払い終身保険」は、メジャーな貯蓄性の保険である「終身保険」とはまったくの別物ととらえるべきものです。すなわち、一時払い終身保険は、「米ドル建て」のような特殊な商品を除いて、お金がほとんど増えません。

 

保険金も払った保険料とほぼ同額なので、一般的な生命保険とも区別して、端的に、相続対策のための特殊な金融商品とイメージした方がわかりやすいものです。

 

以下、この「一時払い終身保険」が相続対策の3つの側面でどのような役割を果たすか、説明します。

相続対策で生命保険(一時払い終身保険)が果たす3つの役割

◆役割1|相続税対策(相続財産の評価額を引き下げる)

第一の役割は「相続税対策」です。これが生命保険(一時払い終身保険)の最も有名な機能でしょう。

 

死亡保険金は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。しかし、法定相続人が死亡保険金を受け取った際に、以下の金額について相続税が非課税となります。

 

500万円×法定相続人数

 

そこで、この「500万円×法定相続人数」の額の非課税枠が機能するということです。

 

◆役割2|相続争いの予防(法定相続分・遺留分対策)

第二の役割は、相続人の間の争いを予防する「遺留分対策」です。

 

相続争いが最も起こりやすいのは、相続財産を公平に分割するのが困難なケースです。典型的なのが、相続財産のなかで不動産や、経営する会社の株式(自社株式)の比率が高い場合です。

 

不動産でもとりわけ家屋敷等は分割が困難です。また、自社株式は後継者に集中させないと経営上不都合な事態を招くので分割は避けるべきものです。したがって、相続人のなかでも誰か特定の1人だけに相続せざるをえないケースがあります。

 

もし、相続財産のうちそのような財産の比率が高いと、法定相続分通りに分けるのが難しく、相続争いの原因となりかねません。

 

法定相続分と異なる分け方をするには、遺言(公正証書遺言)を残しておく方法があります。しかし、遺言によって相続人の誰かの遺留分を侵害してしまう場合、その分について遺言が無効となってしまいます。

 

遺留分は、法定相続人の最低限の取り分なので、もし、誰かの遺留分の侵害が問題になった場合、最終的には「お金」で解決するしかなくなります。すなわち、目的財産を相続した相続人は、遺留分の侵害された相続人に対し、代償金を払わなければならないのです。

 

この代償金の額は、目的財産の承継人が自分で用意しなければなりません。そこで、本人が生きているうちに生命保険に加入しておき、死亡保険金の受取人を目的財産の承継人1人に指定しておけば、代償金の原資を準備してあげることができます。

 

◆役割3|相続税の納税資金準備

第三の役割は、相続税の納税資金を準備してあげることです。

 

たとえば、相続人が不動産や自社株式といった「現物」の資産を受け継いだ場合、相続税の納税資金を自分で準備できないことがあります。そこで、本人が生きているうちに生命保険に加入し、受取人を相続人に設定しておけば、相続人が保険金を相続税の納税資金にすることができるのです。第二の役割「相続争いの予防(遺留分対策)」と似ています。

 

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