生命保険に「保険金500万円×法定相続人数」で加入して「相続対策」をしたつもりの父…逝去後に長男、涙「お父さん、ひどいよ」【税理士が解説】

生命保険に「保険金500万円×法定相続人数」で加入して「相続対策」をしたつもりの父…逝去後に長男、涙「お父さん、ひどいよ」【税理士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

「相続対策」としてよく用いられる方法の一つが、生命保険に、相続税の非課税枠である「500万円×法定相続人数」の額で加入する方法です。しかし、税金のみにとらわれ「受取人を誰にするか」の設定を間違えると、「相続争い」の火種になる可能性があります。保険会社の担当者や税理士でさえ誤解していることがあるので、注意が必要です。税理士の黒瀧泰介氏(税理士法人グランサーズ 共同代表)が解説します。

「保険金の受取人」の指定を誤ると深刻なトラブルに…

このように、一時払い終身保険を利用すると、相続における「相続税対策」「相続争いの予防」「相続税の納税資金準備」の3つの問題にすべて対処できます。しかし、そのためには、保険金の「受取人」の設定を適切に行う必要があります。

 

結論としては、土地や自社株式といった「分割困難で大きな財産」を承継させる法定相続人を、保険金の受取人として指定する必要があります。そうすれば、その者は、他の法定相続人に対する代償金も、納税資金も、両方準備できるのです。

 

よくある間違いは、法定相続人全員を受取人にし、取り分も平等に設定してしまうことです。しかし、これでは、「相続税対策」にはなるかもしれませんが、「相続争いの予防」「相続税の納税資金準備」には逆効果です。

 

たとえば、会社を経営するXさんに3人の子(長男、長女、次男)がいて、自社株を後継者である長男にすべて相続させる場合で考えてみましょう。

 

Xさんが一時払い終身保険に保険金1,500万円(500万円×3人)で加入し、3人の子すべてを受取人にして、かつ、500万円ずつ受け取るよう指定したとします。この場合、長女と次男が遺留分侵害を主張してきたら、どうなるでしょうか。

 

長女と次男が受け取った生命保険金500万円は、民法上は、それぞれ長女と次男の固有の財産です。あくまでも相続税法上「みなし相続財産」と扱われるにすぎません。

 

そして、2人はその保険金とは別に、長男に対して法定相続分や遺留分を主張できてしまうのです。

 

長男は、2人の遺留分侵害に対する代償金と、国に納税する相続税の納税資金をいずれも賄わなければなりません。保険金500万円だけでは、足りない可能性があります。だからこそ、Xさんは、保険金1,500万円全額を長男が受け取るように指定しておかなければならなかったのです。

 

そうしておけば、1,500万円は長男の固有の財産となり、そこから長女・次男への代償金、納税資金のいずれにも充てられたはずだったのです。また、長女・次男もそれで満足した可能性があります。

 

Xさんにしてみれば3人に平等に保険金を500万円ずつ受け取らせたい、という親心からだったかもしれませんが、長男にとってみれば「余計なことをしてくれた、お父さん…ひどいよ…」と泣きをみることになります。

 

なぜなら、先述したように、生命保険の保険金は、民法上は受取人固有の財産であり、相続財産には含まれないからです。

 

相続対策というと、最初に思い浮かぶのは「相続税対策」です。しかし、実は「相続争いの予防」「相続税の納税資金準備」も同等かそれ以上に重要です。決して相続税対策のみにこだわらず、残された家族が相続争いをすることなく円満に仲良くやっていけるよう、慎重に考える必要があります。

 

 

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ 共同代表

公認会計士

税理士

 

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