ガソリン税の「トリガー条項」とは
ガソリン税の「トリガー条項」とは、3ヵ月連続で平均小売価格が1リットル160円を超えた場合に、ガソリン税の税率が1リットル53.8円から自動的に1リットル28.7円に引き下げられるという制度です。トリガー条項が発動すれば、ガソリン価格が1リットルあたり25.1円引き下げられることになります。
2010年に、ガソリン価格が急激に上昇した場合の措置として導入された制度です。しかし、これまでに一度も発動したことがないまま「凍結」された状態です。すなわち、2011年3月に東日本大震災が発生し、その復興財源を確保するための一環として、特別法によってトリガー条項が当面の間凍結することとされ、現在に至っているのです。
2023年11月現在、ガソリン1リットルあたりの価格には、以下の税金が含まれています。
【ガソリン1リットルあたりの価格に含まれる税金】
・ガソリン税:53.8円(揮発油税48.6円、地方揮発油税5.2円)
・石油石炭税:2.04円
・温暖化対策税:0.76円
資源エネルギー庁の給油所小売価格調査によると、2023年11月20日時点のガソリン価格は1リットル173.7円なので、うち32.7%をガソリン税等の税金が占めている計算です(それに加え、ガソリン価格全体に10%の消費税がかかります)。
もし、仮にトリガー条項が発動すれば、ガソリン価格が1リットルあたり25.1円引き下げられるので、この税金の比率を大きく引き下げる機能を果たすことになります。
ガソリン税「1リットル53.8円」は約50年続く「特例税率」
では、トリガー条項が発動した場合の税率はなぜ「1リットル28.7円」なのでしょうか。
ガソリン税の現在の税率、すなわちトリガー条項が発動する前の税率である「1リットル53.8円」は「特例税率」といわれ、1974年から適用されています。
これに対し、「トリガー条項」が発動した場合のガソリン税額「1リットル28.7円」は、「本則税率」といわれます。
ややこしいことに、あくまでも制度上はトリガー条項発動後の「1リットル28.7円」が本来の姿で、「1リットル53.8円」が「特例」ということになっています。特例措置の「1リットル53.8円」の状態が50年近く続いているということです。
「1リットル53.8円」の特例税率は、1974年の導入当時、現在とは異なる税制の下、「暫定税率」といわれていたものが、制度改定以降も形を変えて引き継がれているものです。
1974年に暫定税率が導入された理由は、道路整備の財源が不足しているのでその財源に充てなければならないというものでした。ガソリン税は当時、自動車重量税とともに、使い道が道路の整備・維持管理に限られる「道路特定財源」の一つでした。
しかし、その後、ガソリン税は2009年以降、使い道に制限のない「一般財源」へと移行されました。その際に「暫定税率」は「特例税率」と形を変えて引き継がれました。そして、トリガー条項は2010年、ガソリン税の高騰を抑えるしくみとして導入されたものです。
このように、ガソリン税とトリガー条項をめぐっては、複雑な歴史的経緯があります。