長期的視点で見る日本企業の成長に期待
この株高の背景にある企業の業績を確認しておこう。2023年11月16日時点の集計結果である。
日経平均を構成する225社について9月末との比較を行った。10月に決算を発表した2・8月決算の小売りなども含んでいる。225社の通期計画(非開示分は日本経済新聞社予想)を集計すると純利益合計は9月末の36.8兆円から、11月16日夕時点で39.1兆円と2.3兆円(6%)増加した。225社中、90社(全体の40%)が通期の利益を上方修正した。一方、下方修正は半分以下の40社(18%)で2割にも満たない。
修正額トップはトヨタ(7203)の1兆3,000億円でダントツである。
自動車、商社、電力などの好調ぶりが目立つが銀行も健闘している。
目を引くのが三菱ケミカル(4188)と村田製作所(6981)。化学セクターは今回の決算では軒並み下方修正だった。そのなかにあって三菱ケミカルも例外ではなく業績は悪いが、株式売却益などが押し上げることで純利益を上方修正したものだ。石化事業の見通しは引き下げた。村田も大幅に上方修正したが減益であるには変わらない。しかし、この両者、市場の評価、すなわち株価の反応は悪くない。
苦戦が続くなかでも工場建設など成長への投資を続けていることが評価につながっていると思う。三菱ケミカルは半導体材料の国内新工場を建設して2025年3月期にも稼働させる。半導体受託製造の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の日本進出などを機に素材や装置産業で国内供給網の再構築が広がっている流れに乗ったものだ。フォトレジスト(感光材)向け高分子素材の新工場を建設する。既存拠点と合わせて生産能力は2倍に増える見通しだ。
村田はタイ北部に新設した工場から11月に入って出荷を始めた。さらに今月6日、福井県に主力製品である積層セラミックコンデンサー(MLCC)の研究開発センターを設立すると発表した。350億円を投資し、2026年4月までに完成させる見通し。スマートフォン向けなどで世界シェア4割を持つMLCCの研究開発体制を強化し、競争力を維持する。
こうした将来の成長分野にしっかりと投資を行っている点が市場の評価につながっているのだろう。これが日本企業の多くに広がれば、成長期待の高まりでバリュエーションも上昇するはずだ。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
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