(※写真はイメージです/PIXTA)

中国では現在、新エネルギー車市場が急速な成長をとげており、まるで戦国時代さながらのシェア争いが繰り広げられていると、東洋証券上海駐在員事務所の奥山要一郎所長はいいます。日本にいては気づけない、世界市場とは大きく異なる「中国の新エネルギー市場」の現在地を、奥山所長が解説します。

成長が著しい「新エネ車市場」の現在地

中国の新エネルギー車市場の成長が続いている。

 

今年9月の販売台数は前年同月比27.7%増の90万4,000台。1~9月累計は627万8,000台で、前年同期から37.5%増えた。自動車販売全体に占める新エネ車比率は29.8%で、「2025年に20%」という政府目標は前倒しで達成した。

 

各社が投入する新モデルはほぼオール新エネ車。世界市場とは大きく異なるマーケットがここ中国で生まれている。

 

市場をプレーヤー別に見ると、BYD(01211/002594)の強さが際立つ。22年にガソリン車事業から撤退し、

 

新エネ車に注力。1~9月の新エネ乗用車市場のシェアは36.3%で断トツの1位だ。2位のテスラ(8.4%)、

 

3位の広汽AION(6.9%)に大きな差をつけている。足元10月の販売も前年同月比38.6%増の30万1,833台と好調。

 

ローエンドからハイエンドモデルまで揃う豊富なラインアップ(20モデル超)に加え、半導体や車載電池なども合わせた自社一貫生産が強みだ。

 

BYDの累計販売台数 出所:同花順データより東洋証券作成
BYDの累計販売台数
出所:同花順データより東洋証券作成

 

今年の販売目標は300万台。10月までに238万台を売り上げており、目標達成はほぼ確実視されている。これに続くのが「新興EV3社」だ。理想汽車(02015)の10月販売台数は前年同月比302.1%増の4万422台で、単月ベースで過去最高を更新した。広くて快適な車内はファミリー層に人気。

 

小鵬汽車(09868)は同月で同292.1%増の2万2台を売り上げ、初めて2万台の大台を突破した。高級感溢れるデザインで若者の間で人気上昇中だ。NIO(09866)は、充電ではなく電池そのものを入れ替える「電池交換ステーション」(所要時間約3分)を自前で建設するなど効率を重視した独自戦略を貫く。10月販売は同59.8%増の1万6,074台だった。

 

この3社は、22年は月間販売台数1万台を挟んで拮抗していたが、直近では理想汽車が大きく抜け出してきた感がある。NIOは先ごろ、従業員の10%削減を計画中と伝わっており、明暗が分かれつつある。

 

汽車集団(02238)が立ち上げたEV専用ブランドで、最近は街中で見かけることが多くなってきた。吉利汽車控股(00175)は高級EVブランド「ZEEKR」を展開するほか、百度集団(09888)との共同開発車も市場投入する。出遅れ感のある上海汽車集団(600104)など老舗メーカーの巻き返しにも期待しよう。

 

一方、市場から脱落する企業も数多い。10月には、新興EV3社に次ぐ2番手グループの成長株と目されていた威馬汽車科技グループの破産申請が明らかになった。製品のポジショニングが中途半端で商機をつかみ損ねた、という厳しい指摘も出ている。

 

弱肉強食の激しい競争。それを乗り切ったメーカーこそが真の王者として君臨していくのはどこの業界でも一緒だ。今年は900万台市場になると予想される中国新エネ車市場。戦国時代さながらのシェア争いはまだまだ続く。

 

 

奥山 要一郎

東洋証券株式会社

上海駐在員事務所 所長

 

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