日本の中高層建築物の潮流を変える「木造ビル」が間もなく竣工
そのような中、我が国の中高層建築物の潮流を変え得る中高層の木造ビルが間もなく竣工しようとしています。株式会社AQ Groupが本社ビルとして、さいたま市に建設を進めている8階建ての「普及型純木造ビル」です。
先日、施工中のこの建物の構造設計を担当した東京大学の稲山正弘教授(ホルツストラ一級建築士事務所主宰)に案内いただく見学する機会に恵まれました。この建物は、今後の我が国の中高層建築物の潮流を変える可能性があると思われるので、この建物の特色について触れてみたいと思います。
日本初の8階建て純木造ビル
この建物は、高さ31m、8階建ての純木造の事務所ビルです。免震装置に頼らない耐震構造による構造体の純木造8階建てとしては、日本初ということです。
そして、木構造体の接合部を特殊な金物に頼らず、日本古来の継手・仕口の技術を住宅用プレカット工場で量産加工した部材で建てられていることも大きな特色です。これは、今までの特殊な工法による木造中高層建築物と異なり、中小ゼネコンや地場の工務店でも施工が可能ということです。
また、木のパネルで被覆したり、鉄骨やコンクリート造などとのハイブリット工法とは異なり、純木造であるため、木材の比率もハイブリット工法に比べて高くなっています。そのため、脱炭素社会への貢献度がより大きい工法と言えます。
木をあらわし(通常は仕上げ材によって隠される柱や梁などの構造体を露出させる仕上げ)で、特に内観イメージのように、木製の高耐力組子格子壁をふんだんに用いることで、木質感あふれる空間を実現しています。
今後の新築公共建築物が一気に木造に変わる可能性も⁉
そしてこの建物の最大の特色は、稲山教授によると、建築コストが、同等規模の鉄筋コンクリート造とほぼ同レベルということです。
冒頭で触れたとおり、国や自治体は、公共建築物を建てる際には、木造を積極的に選択するように検討することが義務づけられています。ただ今までは、建築費が鉄筋コンクリート造等に比べて高いため、予算に余裕のない状況下での木造化は限定的でした。
そしてさらに、東京や大阪に本社を置く大手ゼネコンではなくても、地域の中小ゼネコンや地域工務店でも施工が可能であることは、公共事業により地域経済の活性化も推し進めたい地方自治体にとっては大きなメリットになると思われます。
地方自治体にとっては、今回登場したこの工法は、今後の中高層の新築公共施設を一気に木造化させていくポテンシャルを秘めているのではないかと思われます。
中高層の賃貸住宅も木造化されていく可能性も⁉
いままでの連載では、住宅の高気密・高断熱化には木造が最も有利であることや、これから資産価値を維持できるためには、断熱性能等の躯体性能が重要であることは、再三触れてきました。
このことは、賃貸住宅マーケットにおいても当てはまります。来年4月からは、「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」も始まります(関連記事:『2024年、住宅業界に大激震!日本の家「高断熱・省エネ重視」の時代到来で「資産価値」にも影響』)。3階建て以下ならば木造を選び、高気密・高断熱化することが望ましいということもご説明してきました。
ただし、4階以上の木造は、他の工法に比べて建築費が高くなるため、経済合理性という観点から、一般的には木造は考えにくかったわけです。ところが、この汎用性の高いローコストの工法が登場したことで、状況は一変する可能性があると思います。
これから、4階建て以上の賃貸住宅の建設をお考えの場合は、ぜひ高気密・高断熱の木造を検討していただきたいと思います。
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