可処分所得が2倍に増加
派遣会社の担当者から最初に紹介されたのは、新潟県佐渡市の高級ホテル。レストランのホールスタッフとして食事を出したり、食材の説明をしたりする仕事でした。寮に住めるため家賃がかからない上、食事もついていました。時給は1,100~1,260円、月収は手取りで20万円程度あります。「仕事は忙しかったが、使えるお金(可処分所得)がカラオケ店などでのアルバイト時の2倍に増え、余暇にお金を費やす余裕もできた」そうです。
良い出会いもありました。例えば、同じホテルで20年以上もリゾートバイトをやっている女性2人組です。彼女たちは毎年、夏に働いてお金を貯め、旅行に行っていました。これまで「派遣社員やフリーターなどはありえない」と周囲から教えられてきた山之内さん。しかし、「自由に人生を楽しんでいる彼女たちを見て、自分を肯定できるようになり、気持ちに余裕ができた」と話します。
佐渡のホテルでは、20代の板前さんにかわいがってもらい、一緒にたらい船に乗ったり、海に行ったりと観光に出かけました。佐渡のホテルの後に紹介された山梨県・八ヶ岳のレストランでも、仕事に慣れない山之内さんに料理長が親切に根気よく料理を教えてくれました。山之内さんは「リゾートバイト先では本当に良い人柄の方々に恵まれた」と言います。
自らの将来図を描く基盤に
リゾートバイトを通じて、収入が増え、自己肯定感も高まった山之内さん。多くの仲間の生き方を見るにつけ、「生まれた環境は変えられないが、生き方は自分で選択できると思うようになった」そうです。「以前は生きるのに精一杯で今のことしか考えられなかった」山之内さんですが、リゾート地で働くことで財布にも心にも余裕が生まれ、自分の将来を考えられるようになりました。
今の目標は、受験勉強のために中学生までで部活をやめてしまった卓球の仕事に就くことです。山之内さんは「いずれはコーチでもショップの店員でも良いので、一生、卓球に携わる仕事をできるようになりたい」と夢を語ります。「リゾートバイトは生活の基盤を支えるだけでなく、自分の将来図を描くサポートをしてくれた」そうです。今は無駄遣いを避け、将来のために預貯金をしています。
最後に山之内さんはこう話します。「今になってみると、両親も自分の幸せを考えて助言してくれていたのだと思う。幸せになるための手段や価値観が違っていただけではないだろうか…。多くの経験や多様な価値観の人たちとの出会いを経て、視野が広がり、自信と思いやりをより持てるようになった」。
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