●日経平均はダブルトップの調整を経てダブルボトムを形成、上値目途の示唆は34,600円近辺に。
●11月に日経平均が騰勢を強めた背景には米長期金利の低下と米主要株価指数の上昇がある。
●業績の見通しも良好、日経平均は年内に取引時間中の年初来高値33,772円89銭を更新か。
日経平均はダブルトップの調整を経てダブルボトムを形成、上値目途の示唆は34,600円近辺に
6月以降の日経平均株価の動きを振り返ると(図表1)、6月19日の高値(33,772円89銭)と7月3日の高値(33,762円81銭)でダブルトップを形成した後、7月10日にはネックラインとなる6月27日安値(32,306円99銭)を割り込みました(取引時間中、以下同じ)。テクニカル分析上、これは株価下落のシグナルと解釈され、下値目途はネックラインから約1,400円(ダブルトップとネックラインの値幅)下げた30,800円台となります。
日経平均はその後、夏場にかけて横ばい推移が続きましたが、10月に入ると下げ足を速め、10月4日には30,487円67銭の安値をつけ、前述の下値目途を割り込みました。しかしながら、10月4日安値と10月30日安値(30,538円29銭)で今度はダブルボトムが形成され、11月6日にネックラインの10月13日高値(32,533円08銭)を突破したことで株価上昇のシグナルが点灯し、上値目途として34,600円近辺が示唆されました。
11月に日経平均が騰勢を強めた背景には米長期金利の低下と米主要株価指数の上昇がある
日経平均は11月に入り、急速に騰勢を強めましたが、これにはいくつか要因があるように思われます。1つは懸念されていた米長期金利の上昇が一服し、米株式市場に安心感が広がったことです。実際、10月31日から11月10日までの期間において、米10年国債利回りは約28ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し、ダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数は、それぞれ3.7%、5.3%、7.4%上昇しました。
米国株上昇の動きは日本株にも波及し、同期間において日経平均は5.5%上昇、東証株価指数(TOPIX)は3.7%上昇しました。日経平均を構成する225銘柄に目を向けると、上昇した銘柄は159銘柄で、このうち上昇率が2ケタとなったのは26銘柄あり、電気機器、情報・通信業、輸送用機器といった業種が目立ちました。一方、下落した66銘柄には、銀行業が多く含まれました。
業績の見通しも良好、日経平均は年内に取引時間中の年初来高値33,772円89銭を更新か
また、日本株上昇の背景には、国内企業の良好な中間決算も影響していると推測されます。日経平均の1株あたり利益(EPS)と株価収益率(PER)について、10月31日以降の動きをみると、図表2の通りとなります。EPSとPERを掛け合わせると現状の株価水準が得られますが、11月の株高は主にEPSの上昇が主導した形になっており、中間決算を経た市場の業績改善見通しを反映した株高といえます。
日経平均は、テクニカル分析上、株高シグナルが点灯しており、また、企業業績の見通しも良好であることから、年末に向けて水準を切り上げる余地が拡大したと考えられます。引き続き、米国の雇用と物価の強弱感と長期金利の動向、中国景気、中東情勢には注意が必要ですが、大きな波乱がなければ、日経平均は6月19日につけた取引時間中の年初来高値(33,772円89銭)を、年内にも更新する可能性が高いとみています。
(2023年11月13日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均に“株高シグナル” 年内に「年初来高値33,772円89銭」を更新する可能性も【三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト