(写真はイメージです/PIXTA)

観光庁によると、2023年1月~8月の訪日客数は約30%ほど上昇し、国内延べ宿泊者数が大きく増加しました。その一方で、ホテル業界では人材不足に陥っており、コロナ前と同等の稼働率に戻すことが難しくなっています。「中期的な均衡失業率」が上昇した一方で、政策金利の維持が決定されました。本稿ではニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏が、国内ホテル投資の今後の見通しについて解説します。

投資家にとって重要なのは「好立地」「高機能」のホテルの選択

二つ目は営業粗利益の内容である。最近、以前よりも朝食料金の高い施設が増えた。宿泊需要者の目に留まりやすいように、最安値として提示される素泊まり料金を安く設定しているためと考えられる。

 

このような価格設定となるのは、稼働率低下・費用増加(人件費、水道光熱費、アメニティなどの消耗品費など)による宿泊料金の値上げに対し、宿泊客の予算は以前のままで、両者の乖離が広がっているからである。

 

この乖離はホテルの利用料金が下がるか、宿泊需要者が予算を上げるかによって解消されるが、ホテル側が宿泊料金を下げることは難しく、宿泊料金が上がり続けると宿泊客数や宿泊日数が減ったり、より安価なホテルを選択する等、全体として宿泊需要が収縮することが懸念される。

 

世界的な金利上昇や経済不安から、アジア太平洋地域でも、不動産への投資は減少が続いているが、高い収益が期待できる日本のホテルへの投資は旺盛だ※2。建築費や運営費が上昇する一方で、円安などによる海外旅行客の需要創出という影響もある。

 

このように、投資家にとって日本国内のホテルへの投資は、難しい判断となるが、ホテルへの投資は現状でも十分魅力があると考えられ、国内外の宿泊客のニーズに合致する好立地・高機能のホテルを選択することが投資家にとってより重要になると思われる。

 


※1 2023年8月の日本人出国者数は約120万人、2019年同月比で▲43.1%に留まった。

※2 MSCIリアル・キャピタル・アナリティクスによると、2023年上半期のアジア太平洋地域への不動産投資全体は約737億ドル(約11兆円、前年同期比▲39.5%)と減速したが、日本のホテルへの投資額は約2,775億円(+46.2%)となった。なお、投資額は開発用地以外の1,000万ドル(約15億円)以上の不動産取引。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月6日に公開したレポートを転載したものです。

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