(※写真はイメージです/PIXTA)

ある男性のもとに届いた、何年も帰っていない実家の「庭木のトラブル」にまつわるクレームの連絡。そこに一人で暮らすきょうだいを尋ねたところ、衝撃の光景が広がっていました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

木の枝の越境で判明した、ひとり暮らしの兄の異常事態

今回の相談者は50代会社員の鈴木さんです。きょうだいが亡くなり、手続きについて困っているとのことで、筆者のもとへ相談に訪れました。

 

鈴木さんは40歳になるまで、年取った両親と兄の4人で、神奈川県の敷地面積100坪を超える、広い一戸建てに暮らしていました。しかし、10年以上前に両親が立て続けに亡くなり、兄がすべての財産を相続したことをきっかけに、鈴木さんは家を出ました。その後は、勤務先に近い東京の賃貸マンションに暮らしています。

 

鈴木さんは、40代半ばで同じ会社に勤務する女性と結婚しました。お子さんはいませんが、夫婦2人で円満に暮らしているといいます。もともと折り合いがよくなかった兄とは、結婚を機に連絡を取り合うこともなくなりました。

 

「兄は若いときから仕事が続かず、両親はとても心配をしていました。とくに母は、兄のために自分の年金を節約して貯金を続けていたのです。父のほうは、遺産はすべて兄に残すという内容の遺言書を準備していました」

「両親は体が弱かったため、私はサポートするために同居していました。しかし、両親が亡くなったので、あの家に暮らす必要がなくなったのです」

 

両親の相続の意向を聞かされていた鈴木さんは、両親が亡くなったあと、遺産も受け取らず、そのまま家を出たそうです。

草が茂り、ツタが絡み、木の枝が伸びて…

ところが先日、実家のある市の市役所から鈴木さんの元へ手紙が届きました。そこには、〈(実家)の木の枝が越境し、住民から苦情が寄せられています。対処をお願いします〉とありました。

 

「手紙を見たとき〈また仕事を辞めて引きこもっているのか〉とうんざりしました」

 

鈴木さんの兄は、働き始めてもすぐ人間関係でつまずき、その後は無断欠勤を繰り返すようになり、会社から退職させられる、というのがパターンになっていました。退職したあとは、しばらく引きこもりのような状態となり、だれとも口をきかずに閉じこもってしまうのだそうです。

 

鈴木さんがしぶしぶ実家に訪れたところ、芝生だったところは腰の高さまで雑草が伸び、隣地との境界のフェンス部分も雑草やツタが厚く覆っていました。また、庭の果物の木や桜の木が、正面の道路と左右の家の敷地に大きくはみ出し、大量の落ち葉が落ちていました。

 

「門からチャイムを鳴らしても、玄関に回って声を掛けても反応がありません。そこで、持っていた裏口のカギを開けて家に入ったのですが…」

 

鈴木さんが裏口を開けると、大量のハエが飛び交っていました。部屋のなかはごみや食べ残しが1メートル以上積み上がり、大変な悪臭です。なんとかリビングに行くと、白骨化した遺体がありました。

 

「やっぱりな、という思いはありました。すぐに警察に連絡し、指示通り手続きを進めました。警察によると、死因は不明ですが、1年くらい経過しているとのことでした」

 

鈴木さんは、これから先に行うべき手続きがさっぱりわからないと、困惑した様子です。

孤独死であっても、一般的な手続きの流れと同じ

孤独死であっても、一般的な手続きの流れと変わりません。まずは下記の順番で着手していきます。

 

(1)遺品整理 

 

まずは遺品整理を行います。資産の確認のためにも、通帳や書類を確認し、資産の状況を確認します。手が付けられない場合は、業者に依頼してもいいでしょう。

 

(2)資産の確認 

 

通帳や株券が見つかれば、銀行・証券会社に問い合わせ、残高証明書を依頼します。もし海外に口座がある場合は、そちらの照会も必要です。つまり、亡くなった方の財産をすべて確認しなければなりません。

 

資産の総額が、基礎控除額以上(3,000万円+600万円×相続人の人数)になる場合は、相続税の申告が必要です。期限は相続発生を確認した日から10カ月以内です。今回の鈴木さんのケースでは、遺体を発見してから10カ月以内ということになります。

 

(3)相続登記 

 

実家の相続登記が必要です。

 

(4)空家になった実家への対処 

 

大きく分けて「居住する」「アパート建築等の資産活用を行う」「売却する」という、3つの選択肢があります。

 

資産活用として賃貸する場合や、売却する場合には、人が亡くなっているという情報を申し送りする「告知義務」がありますが、今回の孤独死は事件や事故ではないことから、その義務はありません。自己利用する場合も、特段問題ありません。

ひとりで対処できないときは、まず第三者に相談を

家族が孤独死したと知ったら、多くの方は少なからず動揺し、悩むのではないでしょうか。万一、そのような事態が起こったら、ひとりで抱え込むことなく、第三者に相談を行いましょう。

 

少子高齢化、非婚化の影響なのでしょうか、近年は筆者も、類似の相談に対応するケースが増えてきました。

 

ほかにも、葬儀やお墓、残された不動産の問題など、遺族の負担となる事柄が待ち構えています。

 

ここで解決方法を誤ると、相続人の方の今後の人生にまで影響するリスクがありますので、その点をよく考慮して解決策を探ることが重要です。


 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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