(※画像はイメージです/PIXTA)

11月8日に2023年度の司法試験の合格者が発表されました。合格者数は1,781名、合格率は45.3%でした。合格者は1年の司法修習を経て、それぞれの進路に進みます。そして、合格者の進路で最も多いのが弁護士です。そこで、新人弁護士の収入の現状と、今後の見通しについて、データをもとに解説します。

弁護士の年収・所得は10年で大幅減

まず、弁護士全体の年収・所得の額に関するデータを紹介します。

 

日弁連が10年ごとに行っている「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」(2020年)の結果によれば、弁護士の年収は、平均値2,558 万円・中央値1,437 万円となっています。

 

2010年の調査では平均値3,304万円・中央値2,112万円だったので、それと比べると大幅に減少しています([図表1]参照)。

 

日弁連「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」(2010年・2020年)を基に作成
[図表1]弁護士の年収の変遷 日弁連「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」(2010年・2020年)を基に作成

 

次に、諸経費等を差し引いた「所得」についてみると、2010年時点の平均値1,471万円・中央値959万円から、2020年時点で平均値1,106万円・中央値700万円と、大幅に減少しています([図表2]参照)。

 

日弁連「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」(2010年、2020年)を基に作成
[図表2]弁護士の所得の変遷 日弁連「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」(2010年、2020年)を基に作成

 

その背景としては、弁護士の数が増加している反面で、事件数、特に民事事件の件数が減っていることが挙げられます。

 

まず、弁護士の数をみると、「弁護士白書」(2022年版)によれば弁護士の数(弁護士会の正会員総数)は、現行の司法試験制度の第一期生が弁護士登録した2007年時点で2万3,119人だったのが、2022年には4万4,101人、1.91倍に増加しています。

 

これに対し、民事訴訟の地方裁判所での第一審の新受件数は2007年時点で18万2,291件だったのが2021年時点で13万0,860件と、約7割に減っています。

 

弁護士の数が15年で2倍近くに増加しているのに、事件数は著しく減っているということです。これから参入する新人弁護士にとっては、厳しい状況といわざるを得ません。

 

新人弁護士は16人に1人が年収200万円未満

次に、新人弁護士の年収・所得についてのデータを紹介します。

 

日弁連「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」(2020年)によれば、弁護士経験5年未満(司法修習70期以降)の年収は平均値768.5万円・中央値660万円です。

 

また、諸経費等を差し引いた「所得」は、平均値519.3万円・中央値461万円です。平均値・中央値は会社員の初任給よりも高く出ています。

 

しかし、内訳をみると、年収200万円未満が6.1%([図表3]参照)、所得200万円未満が11.9%([図表4]参照)となっています。

 

日弁連「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」(2020年)より
[図表3]弁護士経験5年未満(司法修習70期以降)の年収 日弁連「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」(2020年)より

 

日弁連「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」(2020年)より
[図表4]弁護士経験5年未満(司法修習70期以降)の所得 日弁連「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」(2020年)より

 

弁護士の働き方は多様化しているので一概にはいえませんが、統計上、新人弁護士のうち16人に1人は、新卒サラリーマンよりも年収・所得が低いことになります。

 

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