(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。「アジアリサーチセンター」のレポートを基に、10月のアジア・マーケットを振り返ります。

 

2023年11月のアジア・マーケット・マンスリー(前半)はコチラ>>

インド<金融市場動向>

⇒株式は底堅い動き、金利はもみ合い、ルピー下落リスクに留意。

 

【株式市場】

◆外国人投資家は2ヵ月連続の売り越し

インド株式市場は、9月のCPI伸び率が減速し、8月の鉱工業生産指数が市場の事前予想を上回ったものの、中東情勢を巡る不透明感の高まりや、外国人投資家が売り越しとなったことなどから軟調に推移。一方、個別銘柄では、利益率改善により7-9月期の業績が堅調に推移した消費関連銘柄の株価上昇が目立った。引き続き、インドは安定的な経済成長が期待できることや、地政学リスクが限定的であることなどから相対的に底堅い値動きになると想定。

 

SENSEX指数

 

【債券(国債)市場】

◆債券利回りはもみ合い

これまで実施された利上げによる今後のインフレ見通しや景気実態に対する効果や影響を見極める動きが続く。財政政策にもサポートされ堅調な景気状況が継続し利下げへの転換には時間がかかるなかで、インド国債利回りはもみ合いの展開を想定する。

 

10年国債利回り

 

【為替市場】

◆ルピー下落リスクに留意

目先、米国の金融引き締め観測で米ドルが堅調に推移しやすい環境を想定すれば、短期的にはルピーの下落リスクに留意したい。一方、日銀は当面追加的な金融引き締めを行わないという見方は円安を支持するが、財務省による円買い介入警戒から、対円でもルピー安リスクに留意したい。

 

為替レート

インド<マクロ経済動向・政策>

⇒景気は持ち直し。

 

◆生産は持ち直し

8月の鉱工業生産は前年同月比+10.3%と市場予想を上回り、7月の同+6.0%から加速した。下記にあるように、非常に高い資本支出予算額の伸びを基に投資の代理変数である資本財生産が上振れた後、全体的に生産が持ち直している。財輸出が下振れている状況で鉱工業生産が持ち直しているため、内需主導で生産が持ち直し局面にある。10-12月期にはベース効果で財輸出の前年同月比はプラスに転じるとみられ、生産にポジティブに貢献するだろう。

 

鉱工業生産

 

◆インフレ率はすでに沈静化

9月の消費者物価上昇率は前年同月比+5.0%と、ターゲットレンジに収まった。急騰していたトマト価格は8月中旬に急低下しており、消費者物価上昇率はターゲット内で落ち着くと思われる。また、玉ねぎなど他の野菜価格が総じて落ち着いているため、家計の期待インフレ率の上振れリスクは限定的となり、金融政策スタンスは変わらないだろう。一方、期待インフレ率の上振れリスクがあるとすれば、原油価格の上昇だろう。中東情勢次第では原油価格の上昇は起こりうる。

 

消費者物価上昇率

 

◆拡張型の財政政策

政府は2023/24年度の予算案において資本支出(公共投資)の伸び率を+37.4%と、前年度の+22.8%から加速する形で設定した。拡張型の財政政策が機能することで、2023/24年度には資本財生産・投資は上振れすると判断する。一方、2023/24年度の補助金予算は歳出全体の8.3%を占めており、昨年度の着地予想に対して28.2%の減少となっている。2024年前半に総選挙が行われる可能性が高いことを考慮すると、貧困層の有権者からの支持を固めるために、補助金支出が財政赤字の拡大をもたらす可能性がある。

 

政府予算案

ベトナム ←ピックアップマーケット

⇒株価は持ち直し、ドン安リスクに留意。

 

【株式市場】

◆中央銀行が引き続き流動性を吸収

ベトナムドンが米ドルに対して軟調に推移したことや、ベトナム国家銀行が引き続き金融市場から流動性を吸収したことなどが嫌気された。ベトナム株式市場の新興国市場への格上げに向けた政府の取り組みが進んでいるとの報道や、低迷する不動産市場の改善が示唆されたものの、政府が23年の経済成長率目標を引き下げたことなどが株価の重石となった。海外からベトナムへの直接投資関連では、サウジアラビアの大手石油企業がベトナムでの製油所建設に関心を示したことなどが市場の注目を集めた。海外投資家は7ヵ月連続で売り越し。バリュエーションは割安であり、ベトナムドン安への圧力や不動産市場における流動性が改善すれば回復が期待できる。投資戦略としては、海外企業によるベトナム進出の恩恵が期待できる銘柄、若い人口構成と所得増加の後押しがある消費関連銘柄、ツーリズム関連銘柄などを長期目線で有望視できそうだ。

 

VN指数

 

【為替動向】

◆ドン安リスクに留意

短期的には米国の金融引き締め観測を受けて米ドル下落は考えにくく、ドン安リスクに留意すべきだろう。一方、10月の消費者物価上昇率は前年同月比+3.6%と低位にあり、米ドル高の割にはドン下落ペースは緩やかだ。日銀による追加引き締め観測後退は円安を支持するが、財務省による円買い介入警戒から対円でもドン安リスクに留意したい。

 

ベトナムドン

 

【マクロ経済動向】

◆景気は持ち直し

10月の主要経済指標は総じて持ち直しとなった。財輸出のGDP比が大きいベトナムではベース効果で10-12月期の財輸出の前年同月比はプラスで推移するとみられ、鉱工業生産をけん引する形で景気持ち直しを更に確実なものにするだろう。7-9月期の社債大量償還を乗り切ったことからベトナム景気は持ち直し局面に入ったとの判断を維持する。

 

月次主要経済指標

 

 

(2023年11月7日)

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『持ち直したベトナム株式市場、長期目線で「有望視できる銘柄」は? ~23年10月のアジア・マーケットを振り返る【三井住友DSアセットマネジメントが解説】』を参照)。

 

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
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