(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の病気として代表的な「がん」。日本で根強く残る「不治の病」というイメージから、治療中に精神的に不安定になる人は少なくありません。なかには、がんへの恐怖から科学的根拠のない高額民間療法へ散財してしまう人もいると、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏はいいます。本記事では、がん患者の平田正二さん(仮名)の事例とともに、がん治療をめぐる問題について解説します。

がんによるストレスから家族にあたるようになり…

夏休みに2人の子供も家に集まり平田さんのがんの話題になったときに、子供たちからも注意喚起を受けましたが耳を貸そうとしませんでした。それどころか子供から意見されたことに腹を立て「余計なお世話だ。口出しをするな!」と怒鳴ってしまい、以降子供たちは実家に来ることもなくなってしまいました。

 

その後あるときテーブルの上にがんの免疫療法のパンフレットが置いてあることに妻が気づき平田さんにそのことを尋ねると、後日無料の相談会に行って詳しく話を聞きに行くとのこと。費用は自由診療のため1クールで350万円もかかるようです。

 

平田さんがさまざまな療法にはまっていっている気がして不安を覚えた妻は、平田さんがかかっている病院に設置されている『がん相談支援センター』に平田さんのこれまでの取り組みやいままさに検討している免疫療法に関して相談へ行きました。

 

するとそこで対応してくれたスタッフから、サプリメントなどの民間療法や自由診療で行われる免疫療法は科学的根拠に乏しいもので、特に免疫療法では高額の治療費がかかったにもかかわらずがんが悪化するなどのトラブルも発生しているものもあるということを伝えられました。どうしてもなにか試したい場合にはまずは主治医に相談してから決めることを勧められました。

 

妻は帰宅後病院で相談してきたことを伝え、一度主治医にも相談してみたほうがよいのではと伝えてきたのですが、人から意見をされるのが好きではない平田さんはがんに対する恐怖心やストレスを感じていたこともあり、ついカッとなって「うるさい! 知らないところで勝手なことをするな。俺が自分の金でやっているんだから横から口を出すな!」と暴言を吐いてしまいました。

 

その日以降妻はなにもいわなくなり夫婦で会話もほとんどなく過ごしていましたが、最終的に平田さんは東京都内の一等地にあるクリニックに免疫療法の無料相談会に行き独断で治療を受けることを決めました。妻にも「来週からこの治療を受ける」と伝えましたが、もはやそのときには妻からはなにも言葉はありませんでした。

 

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※プライバシー保護の観点から、実際の相談者および相談内容を一部変更しています。

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