(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の病気として代表的な「がん」。日本で根強く残る「不治の病」というイメージから、治療中に精神的に不安定になる人は少なくありません。なかには、がんへの恐怖から科学的根拠のない高額民間療法へ散財してしまう人もいると、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏はいいます。本記事では、がん患者の平田正二さん(仮名)の事例とともに、がん治療をめぐる問題について解説します。

がん治療中に家族と財産を失う悲劇

がんが体の中にあることに精神的に耐えられなかった平田さんは、副作用が少なく末期がんが消えるという免疫療法の治療を開始しました。その後も妻はなにもいわなかったので平田さんは妻も認めてくれているものと思っていました。

 

ところが初めて治療を受けて夕方に帰宅したところ、家の中に妻の姿がありません。買い物にでも出ているのかと思いましたが、夜になっても妻は戻りません。結局なんの連絡もないまま一晩をひとりで過ごし、心配が増してきた翌日の午前中に妻から連絡が入り、平田さんは衝撃を受けます。

 

離婚の申し出と財産分割の要求

妻から出てきたのはまさかの離婚の申し出、そしてそれにあわせて財産分割の要求がありました。これ以上は平田さんについていけないこと、すでに決心は固まっているので話し合いをする余地はないことを通告されました。

 

財産分割に関しては弁護士に相談済みで、法律上の権利の部分を資料作成してもらったのでそれに目を通し承諾することを求められました。

 

突然の話で事態を受け止めることができず、まったく納得できなかった平田さんですが、妻からは対応してくれない場合には裁判に訴える旨とそれに備えてすでに弁護士に相談し、必要に応じて依頼をするということです。

 

まさかのアパートでのひとり暮らし生活へ

それからしばらくの時間が経過したものの平田さんはどうしても納得できませんでしたが、最終的に妻とは離婚をすることになりそれに応じて財産も分割することになりました。預貯金や住宅などすべて自分の名義で、財産は自分のもので自分の年金収入と資産で妻を養っているという感覚であった平田さんは、財産の分割ということにとまどいを隠せません。

 

しかし弁護士からの法律上の見解を受け、法律上は自分が誤認をしていたことを知り、もはやなす術をなくしました。長年住んできた自宅も売却して現金化し、資産の約半分は妻へ渡すことになりました。

 

そして平田さんが驚いたのが、自分の厚生年金まで分割されたこと。年金が分割対象になることを知らなかった平田さん、預貯金だけでなく毎月の年金収入も月当たり手取り14万円程度と大きく減ってしまいました。

 

そして自宅を処分したので、近隣でアパートを借り20代のころ以来のアパートひとり暮らし。そしておそらくそれが生涯続くことになります。その家賃が7万円と年金収入の約半分で、生活もかなり厳しくなりそうです。妻だけでなく子供2人とも疎遠になってしまっていて、お金以外にも今後がんが悪化して体調が悪くなった場合にも、頼れる人がいなくなってしまいました。

 

収入と預貯金が激減したため、開始したばかりの免疫療法も結局中止することになり、がんへの不安やストレスから家族の意見に耳を貸さず、独りよがりの行動をしてきた結果、家族、財産、そしてがん治療も失うことに。平田さんは6畳1間のアパートでひとり、涙しました。

 

 

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