その年の世相や経済動向が読み取れる「新語・流行語大賞」
今年を代表する言葉を選ぶ「現代用語の基礎知識選 2023ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート30語が11月2日に発表されました。ノミネート30語をみると、その年の世相や経済動向が読み取れます。
~2020年の結果から読み取れる「新型コロナに翻弄された状況」
まず、近年のノミネート30語を振り返ってみましょう。新型コロナウイルスが日本で初めて発生した2020年は「新型コロナウイルス」関連語が、年間大賞に選ばれた「3密」をはじめとして、「新しい生活様式/ニューノーマル」、「アベノマスク」、「アマビエ」、「エッセンシャルワーカー」、「おうち時間/ステイホーム」、「オンライン○○」、「クラスター」、「Go To キャンペーン」、「自粛警察」、「Zoom映え」、「ソーシャルディスタンス」、「テレワーク/ワーケーション」、「濃厚接触者」、「PCR検査」と全体の50%に当たる15語もありました。さらに、ステイホームが増えて利用が増えた「ウーバーイーツ」や、人との接触を避けることができる「ソロキャンプ」をも「新型コロナウイルス」関連語に加えると57%に当たる17語と過半数を占めていました。新型コロナウイルスに翻弄された1年だったことがわかります。
~2021年からコロナ関連語が激減。「新型コロナから回復していく状況」が読み取れる
2021年では変化が見られました。「新型コロナウイルス」とコロナの影響で1年延期された「東京オリンピック・パラリンピック2020」が大きな話題になった1年になりました。2021年では、「東京オリンピック・パラリンピック2020」関連語が「エペジーーン」「カエル愛」「ゴン攻め/ビッタビタ」「13歳、真夏の大冒険」「スギムライジング」「チキータ」「チャタンヤラクーサンクー」「ピクトグラム」「ぼったくり男爵」の9語で全体の30%と、「自宅療養」「人流」「副反応」「変異株」「黙食/マスク会食」「路上飲み」の6語と全体の20%に当たる「新型コロナウイルス」関連語を上回りました。なお、2021年の年間大賞には、メジャーリーグでア・リーグMVP獲得と大活躍した大谷翔平選手の関連語の「リアル二刀流/ショータイム」が選ばれました。
昨年2022年はノミネート30の中で、野球用語が6つになり、コロナ関連語が「オミクロン株」「顔パンツ」の2つに減りました。2022年の年間大賞には、史上最年少で三冠王となったプロ野球ヤクルトの村上宗隆選手を称える呼び方の「村神様」が選ばれました。
新型コロナは「景況感を引っ張る悪材料」ではなくなった
~「新型コロナ関連現状判断DI」と「コロナ関連語のノミネート数」にある強い逆相関
日本で新型コロナウイルスが発生したのは2020年で、景気ウォッチャー調査でその言葉が出てきたのも2020年です。景気ウォッチャー調査で、毎月の新型コロナウイルス関連現状判断DIを作成し、その年平均値を計算しました。2023年は1月から現在判明している9月までの平均を求めました。一方、新語・流行語大賞ノミネート30語の新型コロナウイルス関連語のノミネート数を逆目盛りで右軸に表記した折れ線グラフを作成すると似たような動きになりました(図表2)。4年間のデータしかないのですが、参考までに相関係数を求めてみると、▲0.94と強い逆相関の関係にあることがわかります。
なお、2023年のノミネート30語でのコロナ関連語は「5類」「4年ぶり/声出し応援」の2つで2022年と同じ数ですが、前年に比べ内容が明るい言葉になっています。
12月1日の「大賞発表」に注目
~野球用語の3連覇なるか、それとも他の言葉か?
今年を代表する言葉を選ぶ「現代用語の基礎知識選 2023ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート30語が11月2日に発表されました(図表3)。経済活動が徐々に活性化する中、今年は様々なジャンルからノミネートがなされている状況です。
WBC決勝戦前に大谷翔平選手が発言し話題になった「憧れるのをやめましょう」や、阪神の岡田監督が使った優勝を意味する言葉と、AにはAim(チーム、個人の目標)、RはRespect(チーム、先輩への尊敬)、EはEmpower(個々のパワーアップ)の意味が込められているという阪神球団スローガンとの「アレ(A. R. E.)」、「ペッパーミル・パフォーマンス/ラーズ・ヌートバー」の3語が野球関連として、今年はノミネートされました。
NHK朝ドラ『らんまん』から「スエコザサ」、話題の考察ドラマの「別班/VIVANT(ヴィヴァン)」、とにかく明るい安村のネタ「I'm wearing pants!(アイム・ウェアリング・パンツ)」や、制服姿の4人組ダンスボーカルユニットの「新しい学校のリーダーズ/首振りダンス」、アニメ『【推しの子】』とYOASOBIの主題歌から「推しの子/アイドル」とエンタメ関連の言葉も多い状況です。
今年は偉業達成で将棋が注目され、関連の言葉が「藤井八冠」、「観る将」と2つ入りました。その他にも、ユーザーのテキスト入力を理解し自然な会話で適切な返答を生成する「チャットGPT」、「地球沸騰化」、「闇バイト」などの世相を反映する言葉がノミネートされました。
2021年「リアル二刀流/ショータイム」、2022年「村神様」に続いて野球用語の3連覇なるか、それとも他の言葉が選ばれるか。12月1日に大賞に選ばれる言葉が注目されます。
※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。 さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。 23年4月からフリー。景気探検家として活動。 現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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