5.企業業績と株式
<現状>
●S&P500種指数の10月の予想1株当たり利益(EPS)は242.2と、2ヵ月連続で過去最高水準を更新しました。前年同月比は+4.3%、前月比は+0.5%でした。TOPIXの予想EPSは168.3で、前年同月比は同+6.8%、前月比は+1.0%と増益基調が続いています。
●米国株式市場は3ヵ月連続の下落となりました。米長期金利が2007年以降初めて5.0%を超えるなど金利上昇に歯止めがかからないことが嫌気されました。主要半導体企業の業績が市場予想を下回ったこと、中東情勢の地政学リスクの高まりも調整する要因となりました。
●日本株式市場も米長期金利の上昇や地政学リスクの高まりからリスクオフとなり、下落しました。
<見通し>
●S&P500種指数採用企業の増益率(純利益ベース)は7-9月期が前年同期比+4.3%です。10-12月以降も増益率の上昇が予想されています。一方、TOPIX採用企業の7-9月期の純利益は同+19.0%の見通しです。2023年度も日本の企業業績は増益が予想されています。
●米国株式市場は、中東情勢悪化の影響が不透明な上、FRBも慎重な舵取りを続けており、当面はレンジで推移すると考えられます。その後は、インフレの鈍化と金利のピークアウトが確認され、堅調な収益を背景に緩やかにレンジを切り上げる展開を想定しています。
●日本株式市場は、世界経済の先行きに対する警戒が続くなか、当面振れの大きい展開になるとみられます。その後は日本の名目GDP成長や、製造業における景気循環の底打ちによるEPS成長とともに上昇する、業績相場への移行が期待されます。
6.為替
<現状>
●円の対米ドルレートは、米長期金利が大幅に上昇したことを背景に続落しました。為替介入が意識されたため、150円近辺では下げ渋りましたが、月末に日銀のYCC修正が行われると、市場の想定に比べて慎重な変更にとどまったと受け止められ、1年ぶりに151円台に乗せて終了しました。
●円の対ユーロレートも下落し、約15年ぶりの安値水準となる160円台で終了しました。ユーロは対米ドルでほぼ横ばいでした。
●円の対豪ドルレートは、小幅に上昇しました。豪ドルは中国景気の減速懸念などから、上値が抑えられました。
<見通し>
●円の対米ドルレートは、日米の金利差から下落圧力を受けるものの、FRBの利上げが最終段階に入りつつあるとみられることから下げ渋り、当面もみ合う展開を予想します。先行きは米国の景気とインフレが鈍化するため、FRBによる利下げが意識され、円が小幅に上昇すると想定しています。
●円の対ユーロレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きの欧州金利の低下による金利差縮小により小幅に上昇するとみています。
●円の対豪ドルレートも、当面もみ合うものの、中国経済の減速や豪州中銀の利上げ打ち止めにより小幅に上昇する展開を予想しています。