3.金融政策
<現状>
●FRBは、10月31日~11月1日のFOMCで、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標(5.25~5.50%)を2会合連続で据え置きました。記者会見でパウエルFRB議長は、従来通り、政策判断はデータ次第で決めるとの方針に変わりはないことを示しました。
●ECBは10月の理事会で、2022年7月の利上げ開始から11会合ぶりに利上げを見送り、政策金利の据え置きを決めました。また、資産購入策の特別枠(PEPP)は、少なくとも24年末まで償還があった分の再投資を続ける方針を維持しました。
●日銀は、10月の金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正を決めました。長期金利の上限の「目途」を1.0%に引き上げ、長期金利が1.0%を一定程度上回ることを容認する方針です。短期金利のマイナス金利政策については維持しました。
<見通し>
●FRBは、米国景気が想定以上に堅調に推移していることから、12月のFOMCでFF金利を0.25%引き上げると予想しています。FF金利を5.50~5.75%の水準まで引き上げた後、24年中は据え置くとみています。利下げ開始は2025年以降にずれ込むと想定しています。
●ECBは、高止まりしているコアインフレを抑制するため、現状の政策金利(預金ファシリティ金利4.00%など)を24年後半まで据え置くと予想しています。24年10-12月期に利下げに転じると想定しています。
●日銀は、24年3月の春闘回答集計を確認した上で、24年4月に、「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)を改定するとともに、マイナス金利の解除やYCCの解除・再修正を実施すると予想します。
4.債券
<現状>
●米国の10年国債利回り(長期金利)は、FRBの金融引き締めが長期化するとの見方が一段と強まったことから大幅に上昇しました。中東情勢を巡る地政学リスクから低下する局面がありましたが、債券需給の悪化懸念も加わり、一時5.0%台に上昇し、約16年ぶりの高水準を付けました。
●ドイツの長期金利は、ECBが11会合ぶりに利上げを見送ったことやドイツ景気の減速を受けて、低下しました。
●日本の長期金利は、米長期金利が上昇したことや、月末の日銀によるYCCの再修正を受けて0.9%台に上昇し、10年ぶりの高水準を付けました。
●米国の投資適格社債については、株式市場の下落を受けて国債と社債の利回り格差が拡大しました。
<見通し>
●米国の長期金利は、当面高止まりするものの、先行きは緩やかに低下する展開を予想します。堅調な雇用による景気の底堅さからFRBの金融引き締めは当面続くとみられますが、利上げは最終段階にあると考えられ、先行きは景気減速とインフレの低下が見込まれるためです。
●欧州の長期金利も、ECBの利上げサイクルが終了したとみられるため、米長期金利に連れて先行きは緩やかに低下する展開を予想します。
●日本の長期金利は、日銀による金融政策修正の可能性が意識されるなか、金利水準を切り上げる展開を想定します。