7.リート
<現状>
●グローバルリート市場(米ドルベース)は、米長期金利が大幅に上昇したことを嫌気して、前月に続き大幅安となりました。S&Pグローバルリート指数のリターンは前月末比▲4.8%でした。また、円ベースのリターンは、為替効果がプラスに寄与し、同▲3.3%となりました。
●米国は、長期金利が大幅に上昇したことや、株式市場が調整したことを受けて大きく下落しました。欧州も、投資家のリスク回避姿勢が強まったことから軟調な展開となりました。日本やアジア・オセアニアも、長期金利が上昇したことを受けて、軒並み下落しました。
<見通し>
●グローバルリート市場は、長期金利の高止まりから当面振れの大きい展開が見込まれますが、FRBの利上げが最終局面に近いとみられるなか、長期金利がピークアウトすることに伴い、中期的には回復するとみています。
●米国は、当面振れの大きい展開が見込まれるものの、中期的には底堅い景気を背景に持ち直すとみています。欧州は、景気の停滞から当面上値の重い展開を想定します。日本やシンガポールは、景気の回復基調を背景に緩やかに上昇するとみています。
8.まとめ
【債券】
●米国の長期金利は、当面高止まりするものの、先行きは緩やかに低下する展開を予想します。堅調な雇用による景気の底堅さからFRBの金融引き締めは当面続くとみられますが、利上げは最終段階にあると考えられ、先行きは景気減速とインフレの低下が見込まれるためです。
●欧州の長期金利も、ECBの利上げサイクルが最終段階に差し掛かっているとみられ、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。
●日本の長期金利は、日銀による金融政策修正の可能性が意識されるなか、金利水準を切り上げる展開を想定します。
【株式】
●S&P500種指数採用企業の増益率(純利益ベース)は7-9月期が前年同期比+4.3%です。10-12月以降も増益率の上昇が予想されています。一方、TOPIX採用企業の7-9月期の純利益は同+19.0%の見通しです。2023年度も日本の企業業績は増益が予想されています。
●米国株式市場は、中東情勢悪化の影響が不透明な上、FRBも慎重な舵取りを続けており、当面はレンジで推移すると考えられます。その後は、インフレの鈍化と金利のピークアウトが確認され、堅調な収益を背景に緩やかにレンジを切り上げる展開を想定しています。
●日本株式市場は、世界経済の先行きに対する警戒が続くなか、当面振れの大きい展開になるとみられます。その後は日本の名目GDP成長や、製
造業における景気循環の底打ちによるEPS成長とともに上昇する、業績相場への移行が期待されます。
【為替】
●円の対米ドルレートは、日米の金利差から下落圧力を受けるものの、FRBの利上げが最終段階に入りつつあるとみられることから下げ渋り、当面もみ合う展開を予想します。先行きは米国の景気とインフレが鈍化するため、FRBによる利下げが意識され、円が小幅に上昇すると想定しています。
●円の対ユーロレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きの欧州金利の低下による金利差縮小により小幅に上昇するとみています。
●円の対豪ドルレートも、当面もみ合うものの、中国経済の減速や豪州中銀の利上げ打ち止めにより小幅に上昇する展開を予想しています。
【リート】
●グローバルリート市場は、長期金利の高止まりから当面振れの大きい展開が見込まれますが、FRBの利上げが最終局面に近いとみられるなか、長期金利がピークアウトすることに伴い、中期的には回復するとみています。
●米国は、当面振れの大きい展開が見込まれるものの、中期的には底堅い景気を背景に持ち直すとみています。欧州は、景気の停滞から当面上値の重い展開を想定します。日本やシンガポールは、景気の回復基調を背景に緩やかに上昇するとみています。
(2023年11月2日)
石井 康之
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフリサーチストラテジスト
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【データ解析】主要国の株式市場は「軒並み下落」 23年10月のマーケットを振り返る(三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジストが解説)』を参照)。