新築マンション価格は高値が続くが、需要者が様子見をはじめたエリアも
不動産経済研究所によると、2023年9月の首都圏新築マンション平均発売価格は6,727万円(前年同月比+1.1%)、発売戸数は2,120戸(+4.1%)、初月契約率は67.7%(前月比▲0.9%、前年同月比+6.1%)であった。
また、直近12ヶ月の移動平均では平均発売価格が7,426万円(前年同月比+16.8%、2013年同月比+56.4%)、平均発売戸数は2,236戸(▲17.0%、▲50.7%)となった。価格の上昇傾向と供給戸数の減少傾向は依然として続いている([図表1])。
ただし、2023年9月のエリア別の初月契約率では東京都下が89.5%(前年同月比+28.4%)、神奈川県が76.6%(+15.5%)と高水準である一方で、東京都23区が56.3%(▲12.6%)、埼玉県が39.6%(▲0.2%)となった。
エリア別では需要者が様子見をはじめたところもあるようだ。
デベロッパーのマンション用地取得額は依然として減少傾向
またデベロッパーの用地取得額の減少が続いている。MSCIリアルキャピタル・アナリティクスによると、2023年10月18日までに判明した2023年1月1日以降の関東圏のマンション用地の取得額は約350億円1、2023年1-9月累計の前年同期比は▲72.3%(前期比+9.0%)となった([図表2])。
1 1,000万ドル(約15億円)以上の開発用地の取引のうち、マンション用地と判明しているもの。
マンション用地取得額減少の背景には建築費の高騰
マンション用地取得額減少の背景には建築費の高騰があると考える。国土交通省の建設工事デフレーター(2015年平均=100)によると、2023年7月は建設総合が123.1、住宅・鉄骨鉄筋コンクリート造が123.4、住宅・鉄筋コンクリート造が124.5となった([図表3])。
資材価格の上昇、ドア・サッシ・壁紙などの部材の値上げ、人材不足や2024年問題による人件費増加など建設工事費高騰の要因は多く、更に上昇する可能性も高い。
マンション開発の予算を計画する時点では用地取得費用が最も柔軟に増減させることができるが、用地取得費用は建設に着手する前に支出される。その後の建築費が上昇し、上昇分を価格に転嫁できない場合はデベロッパーの利益が減少する2。需要が強いエリアでは価格への転嫁と利益の確保は比較的容易である。
しかし、需要が相対的に弱く価格の変化に敏感なエリアでは、価格上昇に伴い需要が大きく減退する3。デベロッパーが価格への転嫁は難しいと考えるエリアへの投資を控え、全体としてはマンション用地の取得額が減少していると考える。
2 渡邊布味子『建築費高騰と不動産開発プロジェクト(1)-不動産開発プロジェクトの収支の考え方と資金フロー』(ニッセイ基礎研究所、研究員の眼、2022年09月30日)
3 新築マンション市場の動向(首都圏・全国2023年6月)~最高値更新、今後は供給戸数減少が加速の見通し』(ニッセイ基礎礎研究所、不動産投資レポート、2022年07月28日)