A夫妻は「サ高住」への入居を決断
ご夫婦で施設に入るとなると、2人部屋にするか、1人部屋を2部屋借りるのか悩むところですが、費用面を考えると2人部屋を借りるほうが負担を抑えられるケースが多いです。ただ、2人部屋は1人部屋に比べて数が少ないのが現状です。A夫妻は「できれば2人で同じ部屋に住みたい」と希望されました。
A夫妻の場合、ご主人には介護が必要ですが、奥様は現状介護は必要ありません。自立している人が施設へ入居できるのかと思われるかもしれませんが、「自立支援費(自立サポート費)」などを支払うことで入居が可能な施設が増えています。
いろいろと検討された結果、A夫妻は2人部屋で眺めがよく、病院の近くに立地する「サービス付き高齢者向け住宅」への入居を決断しました。部屋のなかにキッチンやトイレ、浴室などの設備があるのでプライバシーが守られつつ、外出の制限もないため自由に日常を過ごすことができます。
また、スタッフによる見守りサービスがあり、困ったことがあれば相談できるので安心です。もし入浴介助などの介護が必要なときには、外部で契約した介護ヘルパーによるサービスが受けられます。
筆者はA夫妻から相談を受けて、A夫妻がこのサ高住に入居して30年過ごす場合の費用を計算しました。
■A夫妻が100歳まで過ごせる資金プラン
【収入と資産】
年金23万円×30年=8,280万円
預金1,900万円
自宅を売却した資金2,700万円
合計1億2,880万円
【支出】
30年間の生活費:30年×32万円=1億1,520万円(食費・管理費・居住費・介護サービス費・日用品・消耗品費・娯楽費・その他の費用を含む)2人部屋
夫の介護費用(重度化して5年間):300万円(月5万円を5年分)
妻が介護状態に(8年分):480万円(月5万円を8年分)
合計1億2,300万円
【収入と資産】―【支出】=約580万円の余剰金
上記はあくまで概算ですので、ご主人の介護度が重くなったり、奥様が早期に要介護となり介護が長期化したり、先にご夫婦のどちらかが先立たれるなどの変化があります。
また余剰資金が少し残る計算ですが、医療費が想定以上にかかるかもしれません。先々、介護が重度化するなどして資産に余裕が無くなってきた場合には特別養護老人ホームなどへの入居も視野に入れておく必要があります。