調査の結果、約7割が自宅の災害リスクを「調べていない」
私が代表を務める株式会社南勝において、戸建てを所有している25歳以上60歳未満の男女、全国490人を対象に「不動産を購入・建築する際、その土地に災害リスクがあるか調べましたか?」というインターネット調査を行なったことがあります。すると約7割が自宅の災害リスクを「調べていない」と答えたのです。
みなさんはどのように考えていますか?
ハザードマップだけで安心しない
2020年8月から、不動産取引時の重要事項説明において、不動産会社の義務とされたことがあります。「水害ハザードマップ」と照らし合わせて、購入する不動産がどのあたりにあるのかを説明することです。
「土地を選ぶときにはハザードマップを確認しましょう!」とよくいわれますが、それだけでは把握しきれないところも多々あります。
■「ハザードマップ未記載の河川」でも氾濫・決壊リスクはある
現在のハザードマップは2015年に「50〜150年に1回」から「1000年に1回、想定しうる最大降雨」に改定されていますが、2019年3月時点で都道府県の管理下にある河川については、まだ改定への対応が完了していないとのことです。
また、ハザードマップでは、中小河川が氾濫することは想定されていないケースもあるので、ハザードマップ上で浸水想定域でなくても安心安全というわけではないのです。実際に2019年の台風19号発生時に決壊した河川67のうち43が、ハザードマップに記載されない河川だったといわれています。
■河川から離れた地域でも浸水の危険性あり。「内水ハザードマップ」も要確認
2019年のその台風では、神奈川県川崎市で内水の氾濫による被害(下水道管や水路からの浸水)も出ています。そのようなことを考えると、「内水(ないすい)ハザードマップ」の確認も必要かと思います。
「内水ハザードマップ」とは、大雨になった際、下水道管や水路からの浸水が想定される区域や浸水する深さなどの情報をまとめたマップです。内水氾濫による浸水は、豪雨の際にはあっという間に発生する可能性があります。河川から離れている地域に住んでいても浸水の危険性があるのです。しっかり確認しておきましょう。
また、土地周辺の住民に過去の水害状況を直接聞いてみるのも手です。高齢の方であれば、古くから住んでいる方も多いので、ハザードマップでは見えない細かな情報を教えてもらえる場合があります。
「100年前の状態」まで調べてはじめて安心といえる
不動産取引において、ハザードマップの説明は義務化されたものの、その土地の歴史まで説明する義務はありません。過去にどのような土地だったのか、埋立地かどうか、自然災害が起こったことがあるのかなどの情報は自分で調べる必要があります。
■「地名」が災害リスクを示していることも。「昔の地名」も含めて確認
前回記事(【マイホーム倒壊の恐れ】買うと損する「やばい立地」…“地図”や“近隣家屋”に現れる「特徴」)で述べたとおり、古地図で、住所に「池」や「沼」などの漢字が使われているところは水辺だったことがわかるといわれていますが、実際に国土地理院のホームページには、具体的な例があがっています【図表】。
市町村の合併などによって現在は地名が変わっているところも多々あるので、古地図によって確認してはじめてわかることもあります。駅名などに昔の地名が残っている場合もあるので、100年以上前までさかのぼってみることも大切です。
■国交省ウェブサイト、地域の図書館、インターネット…活用できる情報源は増えている
インターネット調査結果の続きですが、不動産を購入・建築する際、「ハザードマップで調べた」と答えた人は17.6%、「古地図で地歴を調べた」と答えた人はわずか4.1%でした。
2011年の東日本大震災以降、土地の事前調査ができる情報源は増えています。古地図については、国土交通省のウェブサイトで閲覧できるほか、地域の図書館に置かれている場合もあります。インターネットでかんたんに調べる方法としては、「地盤サポートマップ」というサイトがあります。住所を打ち込むと地盤解析結果が表示されるので、ぜひ事前調査に役立ててください。
YouTube不動産 印南和行
株式会社南勝代表、一級建築士
住宅専門チャンネル「YouTube不動産」運営者
全国不動産売却安心取引協会理事長、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)。1972年、東京都生まれ。建築の専門学校を卒業後、建設会社で現場監督経験を積み、2011年に株式会社南勝を設立。これまでに1000件以上の住宅のインスペクション(建物診断)を行なうほか、不動産会社向けのコンサルティングを手がける。
「後悔のない家づくりをしてほしい」という思いから、2020年9月に立ち上げた住宅専門チャンネル「YouTube不動産」が「わかりやすくて参考になる」と大好評で、チャンネル登録者数9.91万人、総視聴回数3400万回を超える(2023年10月時点)。著書に『プロが教える 資産価値を上げる住まいのメンテナンス』(週刊住宅新聞社)がある。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
注目のセミナー情報
【税金】11月27日(水)開催
~来年の手取り収入を増やす方法~
「富裕層を熟知した税理士」が考案する
2025年に向けて今やるべき『節税』×『資産形成』
【海外不動産】11月27日(水)開催
10年間「年10%」の利回り保証
Wyndham最上位クラス「DOLCE」第一期募集開始!
【事業投資】11月28日(木)開催
故障・老朽化・発電効率低下…放置している太陽光発電所をどうする!?
オムロンの手厚いサポート&最新機種の導入《投資利回り10%》継続を実現!
最後まで取りつくす《残FIT期間》収益最大化計画