採光・採風のない場所に水まわりをまとめるのは危険
一戸建てを建てる際、日当たりのよい位置にリビングを置いて、水まわりを日当たりの悪い北側や西側にまとめるような間取りになるのは自然なことだと思います。しかし、カビや害虫については、暮らしはじめてから対策を講じてもうまくいかないことが多く、とくにカビは根こそぎなくすことはとても難しいのです。
カビは気温25〜30℃、湿度60%以上になると発生しやすくなり、湿度が80%を超えると繁殖します。カビをなくすには、かなりの高温で長時間殺菌しなければならないので、実際に家庭内で行なうことは不可能でしょう。
【図表】の間取りは、北側に水まわりをまとめた住宅のものです。1日中日当たりのない場所なので、冬の朝にはお風呂の窓についた水滴が凍ってしまい、開かなくなってしまうのだとか。
このような住宅でカビを防ぐには、入浴後に浴室の水滴を拭きとるしかありませんが、毎晩そうすることは面倒ですよね。
この住宅の北側は湿気のこもる室内だけでなく、外壁の劣化もあり、浮き上がってヒビが入っているところもあるそうです。日の当たらない北側ほど見に行く機会は少ないと思いますが、年に2回、厳しい暑さ、寒さのあとに外壁のチェックをしてみてください。
【対処法】北側に水まわりを配置するときには、採光・採風・湿度管理に気をつける
採光・採風のない場所に水まわりをまとめる場合には、気密性、断熱性の高い住宅にすることが大切です。
なお、2003年以降の住宅に義務づけられている「24時間換気システム」は1年を通して作動させておく必要があります。電気で動かしているため月々数百円の電気代がかかりますが、スイッチを切ってしまうと室内の空気が循環しなくなるので湿気がこもり、カビが生える原因になってしまいます。
害虫はどこからでもやってくる…新築住宅こそ油断禁物
あまり思いつかないことかもしれませんが、建築中から引き渡しまでの工程でゴキブリが侵入する可能性があります。建築中は入り込むすき間があちこちにあるため、さまざまな害虫が侵入します。職人さんたちがいなくなって暗くなると入ってくるんですね。
ゴキブリは「敵」がいないところに侵入して行動する習性があります。まだ誰も住んでいない家は、ゴキブリにとって安心安全な場所なのです。
施工中はエアコンなどを取りつけるために開けた穴から侵入することもあります。ゴキブリは3mmくらいのすき間でもスルスルっと入ってきます。水をあまり使用していない配水管も要注意です。ゴキブリは食べ物がなくても、湿気のあるところを好むので、配水管にも潜んでいます。知らぬ間に家の中まで入り込んでしまい、新築住宅でゴキブリに遭遇することがあるのです。
引っ越し後、ダンボールのまま収納する人もいますが、ダンボールにくっついて一緒に引っ越ししていることもあるので早めに荷物を全部出して、ダンボールは捨てるのがおすすめです。
ゴキブリはダンボールに卵を産みつけていることがあります。卵は思いのほか大きいので、ダンボールをきちんと確認すれば見つけられます(卵がどんなものかは、インターネットで調べてみてください)。
また、エアコン室外機の排水ホースも侵入経路のひとつです。排水ホースは無防備に家の外に垂らされていることがほとんどなので、そこから家の中に入ってきます。ホームセンターで専用のキャップを購入してふさいでおきましょう。
このように、ゴキブリをはじめとする害虫たちは、どんなに対策を講じてもさまざまなところから侵入してしまいます。風通しをよくして湿気をなくすことは、カビだけでなく害虫の発生も防いでくれるので、日々の換気はしっかりと行ないましょう。
YouTube不動産 印南和行
株式会社南勝代表、一級建築士
住宅専門チャンネル「YouTube不動産」運営者
全国不動産売却安心取引協会理事長、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)。1972年、東京都生まれ。建築の専門学校を卒業後、建設会社で現場監督経験を積み、2011年に株式会社南勝を設立。これまでに1000件以上の住宅のインスペクション(建物診断)を行なうほか、不動産会社向けのコンサルティングを手がける。
「後悔のない家づくりをしてほしい」という思いから、2020年9月に立ち上げた住宅専門チャンネル「YouTube不動産」が「わかりやすくて参考になる」と大好評で、チャンネル登録者数9.91万人、総視聴回数3400万回を超える(2023年10月時点)。著書に『プロが教える 資産価値を上げる住まいのメンテナンス』(週刊住宅新聞社)がある。
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