「空き家問題」と「空家法」
国土交通省が10月25日に公表した基準案は、「空き家問題」に対処するための法律「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、空家法)の改正に伴って、新たに規制対象となる家屋の範囲を定めるものです。
「空き家問題」とは、高齢化が進むなか、日本全国で誰も使用せず放置されている「空き家」が増加しているという問題です。空き家が放置されると、倒壊や朽廃により、近隣住民や通行人等の安全や衛生が害される可能性があります。また、環境も悪化します。
「住宅・土地統計調査」の結果(総務省)によれば、空き家のうち倒壊や朽廃のリスクが特に高い「その他の住宅」の数は、1998年~2018年の20年間で182万戸から347万戸へと、2倍近くまで増加しています。また、今後も増加し、2030年には470万戸に達すると予測されています([図表]参照)。
そこで、国は空家法を制定し、空き家を放置した所有者に以下のペナルティを課するなどして、空き家の維持管理、処分を促しています。
・空き家を放置した場合の行政からの介入とペナルティ
・空き家を放置した場合の税制上のペナルティ
空家法については、2023年6月に法改正が行われました。大きな改正点は、上記2つのペナルティが課される対象となる家屋の範囲が拡大されたことです。改正法は12月中旬までに施行されることになっており、その施行に向けて、関連する法令や基本指針等も整備されることになっています。
そして、10月25日に公表されたのは、その一環として、新たに法規制の対象となる家屋「管理不全空家」の判断基準を定める案です。公表と同時にパブリックコメント(意見公募手続)にかけられています(受付は11月23日(木)17:00まで)。
以下、空家法による規制について、法改正および今回公表された基準案の中身にも触れながら解説します。なお、他方で空家法とは別に、空き家を売却した場合の税制上の優遇措置も設けられているので、それについてもあわせて解説します。