(※画像はイメージです/PIXTA)

国土交通省は10月25日、いわゆる「空き家問題」について、法令上、空き家の所有者に様々なペナルティが課せられる対象となる「家屋」の範囲を拡大する新しい基準案を公表しました。空き家問題とは何か、法令上どのような規律がされているのか。空き家問題を含む不動産関連法務に詳しい弁護士・荒川香遥氏(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)が、今回公表された基準案にも触れながら解説します。

空き家を放置した場合の税制上のペナルティ

空き家を放置した場合には、行政上のペナルティに加え、税制上のペナルティが課されることがあります。

 

すなわち、本来、小規模な住宅の敷地については、200平方メートル以下の部分に対する固定資産税が6分の1、都市計画税が3分の1に引き下げられることになっています(小規模住宅用地の特例)。しかし、「特定空家」と認定されてしまうと、この特例を受けることができません。また、法改正により、「管理不全空家」も同様の扱いになります。

 

つまり、「特定空家」「管理不全空家」については、固定資産税が6倍、都市計画税が3倍になってしまうのです。これは、事実上のペナルティといえます。

空き家を売却した場合の税制上の優遇措置

これらの規制がある一方で、相続によって取得した空き家を売却した場合には、一定の要件をみたせば税制上の優遇措置を受けることができます。

 

すなわち、1981年5月31日以前に建築された空き家については、これを相続で取得した所有者が、建物を除却して更地にするか、または耐震改修をしてから売却した場合、譲渡所得の計算上、3,000万円の控除を受けることができます。

 

法改正により、優遇措置の対象となるケースが拡大されます。すなわち、売却後に、買主が売買契約に基づき建物を除却、または耐震改修する場合も、対象となります。

困ったら行政や専門家のサポートを

このように、空き家を放置した場合には行政によるペナルティや税制上のペナルティが課せられることになります。また、2023年12月までに施行される法改正によって、ペナルティの対象となる空き家の範囲が拡大されることになります。

 

相続等で空き家の所有権を持っている人は、これまで以上に注意が必要です。自分で適切に維持管理するか、売却または賃貸をするなどの対応が求められます。なお、空き家を所定の方法で売却した場合には税制上の優遇措置を受けることができます。

 

多くの自治体が、地域の不動産業者や弁護士等の専門家の協力をえて相談窓口を開設しています。放置された空き家が増えると、自治体にとってもマイナスが大きいのです。

 

また、「空き家バンク」というサービス利用できるところもあります。これは、自治体のホームページで空き家の売買や賃貸の情報を提供し、マッチングするサービスです。さらに、空き家のリフォームを行った場合に補助金を受け取れる自治体もあります。

 

したがって、もし、空き家をどうするか悩んだ場合には、できるだけ早く行政や専門家のサポートを受けることをおすすめします。

 

 

荒川 香遥

弁護士法人ダーウィン法律事務所 代表

弁護士

 

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