空き家を放置した場合の行政からの介入とペナルティ
空家法では、以下の状態の空き家を「特定空家等」と扱っています。
【空き家が「特定空家等」に該当する状態】
・倒壊等、著しく保安上危険となるおそれのある状態
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態(アスベストの飛散、ごみによる異臭の発生等)
・著しく景観を損なっている状態
・その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態(木の枝の越境、棲みついた動物の排泄物等)
空き家が「特定空家」に該当する場合、市町村長は所有者に対し、除却、修繕、木や竹の伐採等の必要な措置をとるよう「指導」「助言」をすることができます。この段階では法的な強制力はありません。
しかし、所有者がそれに従わない場合は、「勧告」や「命令」を発することができます。「命令」は法的強制力がある「行政処分」であり、もし従わない場合には、最大50万円の過料が課されることになっています。
さらに、最終的には「行政代執行」といって、行政によって建物の解体等が行われることもあります。なお、行政代執行は、所有者の代わりに行政が建物の解体等を行うものなので、その工事費用は所有者が負担しなければなりません。
◆「法改正」で対象となる「空き家」の範囲が拡大
以上の規律は、すでに「特定空家」になってしまってからのものです。しかし、特定空家になってからの対応では限界があります。
たとえば、窓ガラスが割れたまま放置されている空き家は、そのままで放置され続けると「特定空家」になる可能性が高いので、そうならないうちに何らかの対処ができることが望ましいといえます。
そこで、2023年6月に行われた空家法の改正により、「特定空家等」の前段階として「管理不全空家」という分類が設けられ、これに対しても市区町村長が「特定空家等」に準じた対応をとれることになりました。
管理不全家屋とは、「そのまま放置すれば特定空家等に該当することになるおそれのある状態」をさします。
10月25日に公表された基準案では、管理不全空家に該当するものの例が挙げられています。前述した「特定空家」の4つのパターンに即し、そうなってしまうおそれのある状態を具体的に示しています。
以下、その一部を紹介します。
【「著しく保安上危険となるおそれのある状態」になるおそれのある状態】
・建物の屋根の変形、外装材の剥落・脱落
・建物の構造部材の破損、腐朽、蟻害、腐食
・建物の雨水浸入の痕跡
・門、塀、屋外階段等の構造部材の破損、腐朽、蟻害、腐食等
・立木の伐採、補強等がなされておらず、腐朽が認められる状態
・擁壁のひび割れ等の部材の劣化、水のしみ出し又は変状
・擁壁の水抜き穴の清掃等がなされておらず、排水不良が認められる状態
【「著しく衛生上有害となるおそれのある状態」になるおそれのある状態】
・吹付けアスベストの周囲の外装材、アスベスト使用部材の破損等
・排水設備の破損等
・清掃等がなされておらず、常態的な水たまりや多量の腐敗したごみ等が敷地等に認められる状態
・動物の駆除等がなされておらず、常態的に動物が敷地等に棲みついている状態
【「著しく景観を損なっている状態」になるおそれのある状態】
・補修等がなされておらず、屋根ふき材、外装材、看板等の色褪せ、破損、汚損が認められる状態
・清掃等がなされておらず、散乱・山積したごみ等が敷地等に認められる状態
【「その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」になるおそれのある状態】
・開口部等の破損等(不法侵入されるおそれ)
・立木の枝の剪定等がなされておらず、立木の枝等のはみ出しが認められる状態(通行障害等が発生するおそれ)
・動物の駆除等がなされておらず、常態的に棲みついている状態(近隣への動物の侵入、悪臭、騒音のおそれ)
空き家を相続等によって所有することになった場合、これらの状態にならないよう、自ら適切に維持管理をするか、あるいは売却等をする必要があるということです。