「息子は髪を気にしてるんだ・・・かわいそうに」
最初の育毛サロン挑戦は、あえなく撤退で終わったものの、シャンプーと育毛剤は買って帰ってきたことを前にお話ししました。その後もサロンのシャンプーは何度か買ったことがあります。
そのシャンプーが正直、困りモノでした。はっきりとサロンの名前が印刷されてしまっているからです。
シャンプーや育毛剤は、髪を洗うときに使うものですから、普通は風呂場や洗面所に置きますよね。
でも、20代の頃、私は実家暮らしでしたから、風呂場には置くに置けませんでした。
なぜって、「アートネイチャー」とか「リーブ21」などと書いてあるシャンプーの容器を見た家族は、どう思うでしょうか?
たとえば母親が見て、「おやっ? うちの息子は、あの有名な育毛サロンに行ってきたんだ。エラいねえ、よかったねえ」とは思わないでしょう。
「息子は髪を気にしてるんだ。かわいそうに」と心配させるだけでも気が引けます。
ましてや「お父さんがハゲてるから、この子がつらい思いをするのよ!」なんて、夫婦げんかに発展されては目も当てられません。
ともかく、親に薄毛で悩んでいると思われるのがイヤで、変な言い訳までしたことを覚えています。
「いやあ、なんか街頭キャンペーンで、こんなの売ってたんだよねえ」と。
そんなふうに家族に説明して、納得させるつもりだったなんて、実に無理筋ですね。
余談ですが、そういう経験もしてきたので、私の経営する会社でつくっている『毛髪大作戦』というシャンプーは、パッケージのどこにも、それとわかる文字は載せていません。
自宅のお風呂に置くだけでなく、ちょっと銭湯にもっていく場合にも、デカデカと“育毛”みたいなことが書いてあったら、恥ずかしいですよね。
もしもあなたが、幼いお子さんをおもちだったら、家のお風呂場にあるシャンプーを見た娘さんを口止めできますか?
「ねえ、ミクちゃんのパパは、どんなシャンプー使ってるの? うちのパパはね、もうはつだいさくせん、っていうのを使ってんのよ」
もう近所の笑い者です。
だから、私の経営する会社のシャンプーは、一見しただけでは意味がわかりにくい英語表記の容器にして、「珍しいね。なんか北欧あたりのシャンプー?」みたいに、ごまかしが利くデザインにしているのです。
育毛サロンからのしつこい営業電話に反撃
それはさておき、私がシャンプーを買ったある育毛サロンからは、あとでしつこく電話がかかってきました。
そして、「どうするんですか?」と聞かれるのです。
この「どうするか」というのは、もう、やるかやらないかじゃなくて、どのコースにするのかというニュアンスです。
「誰がやるって言ったんですか?」と反論しても、ガンガン攻撃的なトークをしてくるので、さすがの私も頭にきました。
こうなると、口の悪いテッちゃんです。
「それはないんじゃないの? その脅しているような言い方。仮にやろうと思っていたって、そんな言い方されたら、絶対やりたくなくなるよ」
そうしたら、“ドSの女王様”もさすがにシュンと黙ってしまって、電話はそれっきりになりました。
まあ、セールスを撃退したからといって、私の髪が救われたわけではないのですが……。