今回は、投資関連のロボアドバイザービジネスを日本で始める上での法規制について見ていきます。 ※本連載は、西村あさひ法律事務所の有吉尚哉弁護士、本柳祐介弁護士、水島淳弁護士、谷澤進弁護士の編著書籍、『FinTechビジネスと法 25講』(商事法務)の中から一部を抜粋し、近年、大きな注目を集めている「FinTech」の概要や関連法制について紹介していきます(本稿は、上記書籍の14講の抜粋です)。

法令で定められた金融商品取引業の登録

1.必要となる許認可

 

一口に、ロボアドバイザーといっても、その提供するサービスの内容によって、取得するべき許認可は異なるが、金融商品取引法上の金融商品取引業の登録が必要になるものが多いと解されることから、本講では金融商品取引業の登録との関係で論点となり得る事由について以下に論じる。

 

その行うロボアドバイザービジネスについて金融商品取引業の登録が必要になるかどうかは、提供するサービスの内容次第ではあるものの、取り扱う株式や投資信託(外国の上場ETFも含む)は金融商品取引法における「有価証券」に該当する(1)

 

このことから、たとえば、かかる有価証券の価値等について投資に係るアドバイスを業務として行う場合には投資助言・代理業の登録が、顧客から資金運用の一任を受けて、その資産をロボアドバイザーを用いて運用する行為を業務として行う場合には投資運用業の登録が、有価証券を市場で買い付けることまでできるサービスを提供する場合には第一種金融商品取引業の登録が、それぞれ必要かどうかという検討を行う必要がある(2)

自社サービスが登録を要する業務に該当するのかを検討

金融商品取引業の登録が必要な業務を、かかる登録なくして行った者は、金融商品取引法違反となり刑事罰の対象となる。

 

したがって、ロボアドバイザービジネスを開始する前に、まず、自社の提供するサービスが金融商品取引業の登録等を要する業務に該当か否かについて具体的に確認することが重要である。

 

提供するサービスが金融商品取引業の登録等を要する業務に該当する場合には、当該登録のために必要となる社内規程を含めた組織体制を整備し、登録手続を行うために必要となる期間も踏まえて、ロボアドバイザービジネスの開始時期を検討する必要がある。

金融商品取引業の類型と業務内容例
金融商品取引業の類型と業務内容例

(1)金融商品取引法2条1項。

(2)金融商品取引法29条、28条。本講では、一般的なロボアドバイザーに係るサービスで問題となる金融商品取引業について述べていることに留意されたい。業務の内容次第では、たとえば市場デリバティブ取引を行うような場合には、第二種金融商品取引業の登録取得も考えられるが、一般的なロボアドバイザービジネスでは考えにくいため、第二種金融商品取引業は本講では述べていない。

本連載は、2016年7月15日刊行の書籍『FinTechビジネスと法 25講』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

FinTechビジネスと法 25講

FinTechビジネスと法 25講

有吉 尚哉,本柳 祐介,水島 淳,谷澤 進 編著

商事法務

西村あさひ法律事務所所属の弁護士が、「FinTechビジネス」のさまざまな分野ごとに概要を紹介しつつ、それらのビジネス遂行上に必要な法令の基礎知識・適用関係を、平成28年5月25日に成立した改正Fintech関連法も踏まえて解説…

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