生活保護、保険料減免…国や自治体の「救いの手」
その後、Aさんは先輩の言葉どおり、福祉事務所や社会保険事務所、市役所にも足を運びました。するとどの窓口も、Aさんの現状を親身になって聞き、その窓口専門のアドバイスをしてくれます。
しかし、Aさんはいままで工務店に勤め給与と年金所得があるため「所得制限」に抵触し、各事務所の支援の適用は現状では難しいとのことでした。
そのため、「来年1月から1年間、収入は年金のみで貯蓄を取り崩して生活し、再来年以降にその所得を各事務所に申請すれば支援を受けられるかもしれない」という結論に至りました。
なお、Aさんの収入が年金月額6万円だけのとき、各事務所からの支援は次のとおりです。
■福祉事務所……「生活保護制度」
■社会保険事務所……「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金制度」※
■市役所(高齢者福祉担当)……国民健康保険保険料などの減免制度など
※ この制度の利用には前年の年金収入金額とその他の所得の合計が87万8,900円以下であることが条件。総務省「2022年(令和4年)家計の概要」によると、令和3年3月の年金生活者支援給付金平均給付月額は3,964円となっている。
まとめ…人の親切が身に染みた1ヵ月
家出をした自分を責める気持ちもあり、寡黙を貫いてきたAさんでしたが、各窓口に相談し温かい言葉をもらったことで道が開けてきました。仕事仲間も、「自分から嫌になって仕事を辞めたのでないなら、健康なうちはどこかに仕事はある。なんせ一流の腕を持っているんだから」と言ってくれます。
「たしかに、いままで休むことなく仕事をしてきたのだから、同じ業種のほうがやりやすい。知り合いのところに仕事をもらいに行こう」
そう考えた矢先、同業の事業主Cから連絡がありました。聞けば、亡くなった店主から「自分になにかあった時は店は閉めざるを得ないけど、Aが働けるうちは面倒を見てやってくれ」と頼まれていたそうなのです。時間給ですが、Aさんは働き口を見つけることができました。
また、夫の実家で暮らす姉は両親の位牌を家に置けません。そこで、檀家寺に預けてあった両親の位牌はAさんが受け取りに行き、アパートの自宅に持ち帰り安置しました。
失業後1ヵ月が過ぎ、落ち着いて生活ができるようになったAさん。亡き両親の前で、「もうギャンブルはしない」と誓いました。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
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