大学受験で父と大揉め…20歳で家を飛び出したAさん
遡ること50年前、Aさんにはつらい思い出があります。二浪しても、父が望んだ大学に合格できなかったのです。
「あと1年浪人しろ」という父と、その年に合格した大学に入学したいAさんは何度も話し合いましたが、毎度最後は取っ組み合いの大喧嘩。母や4歳年上の姉がAさんを取りなしたものの、ついにAさんは家を飛び出しました。
家を出たあとは漂浪を続けていたAさんでしたが、23歳のときある街の飲み屋で電気工務店主と知り合います。店主に気に入られ、その電気工務店に住み込みで働き始めました。
その後40年間、仕事に必要な資格を取得しながら寡黙に働き続けたAさん。その卓越した技術は誰もが認めるほどです。
ただ、休日のギャンブル通いは欠かすことができず、お金は貯まらないどころか、給料を前借りすることも。見かねた店主が何度も「ギャンブルはやめろ」と忠告しましたが、Aさんは耳を貸しませんでした。
43年ぶりの家族との再会
そんなある日のこと。突然、Aさんの住む寮に姉が訪ねてきました。
姉はひとこと、「お父さんが亡くなったよ」と告げました。そして、姉はAさんを母に会わせるため、Aさんとふたり実家へ向かったのです。
43年ぶりに会った母は90歳になっており、記憶よりずいぶん小さくなっていました。一目見たとたん涙があふれ、Aさんは母にこれまでの無礼を謝り、母も息子を見てただ涙を拭うばかりです。
しかし、Aさんは父のお位牌に手を合わすことはありませんでした。遺産も「絶対にいらない」と固辞しましたが、母姉から「父の遺言だから」と言われ、しぶしぶ現金約300万円を相続しました。
その後、母はAさんの顔を見て安心したのか、父を追うようにして逝去。母の遺産はほとんどなく、また実家は借家だったため家主に返しました。
同じ時期、Aさんの姉の夫(65歳)が再雇用先を退職することとなり、FPである筆者はA姉夫婦から老後生活に関する相談を受けていました。その際、A姉から一連の事情を伺っていたのです。
また、A姉から「現在はAの居場所もわかり落ち着いて生活しているけれど、今後Aになにかあったときは相談させてほしい」とお願いされていました。
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